【JC】1週前オルフェ堂々先着
「ジャパンC・G1」(25日、東京)
迎撃態勢は着々と整いつつある。凱旋門賞2着馬オルフェーヴルが15日、再タッグを組む池添を背に栗東坂路で1週前追い切りを行った。力強いフットワークで堂々の先着を果たして好調ぶりをアピール。凱旋門賞馬ソレミアへのリベンジもかかる一戦、国内復帰初戦を鮮やかに飾り、改めて最強の2文字を誇示する構えだ。
見慣れた人馬のシルエットが、栗東坂路で躍動した。池添を背に凱旋門賞2着馬オルフェーヴルはバトードール(5歳1600万下)と併せ馬。1馬身先行する僚馬を追いかける形でスタートすると、残り2Fで早々と抜き去る。1頭になってからも集中力を欠くことはなく、余力十分にフィニッシュを決めた。
タイムは4F52秒9‐38秒7‐12秒6。宝塚記念で5冠を達成して以来、約5カ月ぶりに感触を確かめた池添は「多少、行きたがるところはあったけど、我慢はできていた。息遣いも良かったし、気合も乗り過ぎていない」と納得の表情。見守った池江師も「動きはまずまず」と及第点だ。
再コンビを結成して国内外の強豪を迎え撃つ一戦。しかし、主戦・池添の心中は複雑だろう。宝塚記念V後は凱旋門賞に向けて気合を入れ直していた矢先、無情にも海外の舞台経験の差を理由に、スミヨンへの乗り代わりが決定。前哨戦のフォワ賞、本番と画面を通じて応援するしかなかった。帰国初戦で手綱が戻ることにはなったものの、手放しで喜べるほど無邪気にはなれない。
「乗れなかった悔しさは一生残る。ただ、あのあと夏の北海道で、蛯名さんから声をかけられたんです。“お前は腐ったらいかん。頑張っていればいいことがある”と。そのひと言で救われました」。追い負けをしないよう、海外遠征を見越して続けていたトレーニングは、しばしの休止を経て再開した。
3冠を達成した菊花賞、古馬を圧倒した有馬記念、逸走から2着に入った阪神大賞典、惨敗に終わった天皇賞・春、復権果たした宝塚記念‐。幾度となく歯を食いしばった。打ちのめされた。そして、人目をはばからず歓喜の涙をこぼした。世界最高峰の舞台にそろって立つことはかなわなかったが、オルフェの蹄跡はすなわち池添謙一の物語。今、その第2幕が上がろうとしている。
凱旋門賞馬ソレミアとの再戦は見どころだが、鞍上はシンプルな思考で戦うことを強調した。「ワクワクするとか、そういうのはないです。僕は凱旋門に乗っていないので、リベンジとかも関係ない。折り合いをつけてスムーズな競馬ができれば」。刻一刻と迫る決戦を見据え、神経をギリギリまで研ぎ澄ましていく。