【JCダート】酒井アワーズ絆のV

 「JCダート・G1」(2日、阪神)

 砂の新王者誕生だ。国内ダートの強豪が集った一戦をレースレコードで制したのは、6番人気のニホンピロアワーズだった。2着ワンダーアキュートに3馬身半差をつける完勝でG1初制覇。大橋師、酒井にとっても、うれしい初のビッグタイトル獲得となった。7連勝での戴冠を目指したローマンレジェンドは4着に敗れ、この秋のG1で初めて1番人気馬が連対を外した。また、3連覇のかかったトランセンドは最下位の16着に沈んだ。

 “恩返し”のG1勝利だ。「人に支えられたから続けられた。1回つぶれかけたジョッキーなので…。辞めなくてよかった」。デビュー15年目で味わう初のG1制覇の感触。頂点に立ったニホンピロアワーズの背中で、酒井は大きなガッツポーズを決め、あふれんばかりの思いを爆発させた。

 4番手を追走し、直線は持ったままの手応えで前に並びかけた。早めに先頭に立つと遊ぶ癖がある。「追ってからは不安を残しながらだったけど、足音が聞こえなかったから“今回はやったった”って思った」。一瞬で後続を置き去りにすると、3馬身半差の完勝を決めた。「びっくりするぐらいの勝ち方。アワーズが大したもんです」。相棒の頑張りに胸を張った。

 大橋師は4回目の挑戦でG1初制覇。「追い出しをゆっくりしているし、これなら大丈夫と確信した。意外と冷静でした」と笑う。6連勝を決めたローマンレジェンドと首差の接戦を演じた前走に手応えを感じていた。「引けは取らないと思っていた。時間をかけてじっくりとやったのが実った」。この日も主戦を笑顔で送り出した。「うまく乗った。(酒井)学を信じていた。男にしてやりたかった。男になったな」と、大仕事を成し遂げた鞍上をねぎらった。

 酒井には苦しい時期があった。06年は今回と同じオーナーのニホンピロコナユキで挙げた1勝だけ。「辞めようと思ったこともあった。返し切れない恩があるし、感謝してもし切れない感謝がある。僕なんかを大きなレースに乗せてくれて…」。どん底の時代にも騎乗させてくれたオーナー、全権を委任してくれたトレーナーの期待に見事に応えてみせた。「ガキのころからG1を勝つことが夢だった。周りに助けられてここまできたので、ちょっとでも返せたかな」。検量室で手荒い祝福を受けても、涙は出なかった。「勝ったら泣くと思っていたんですけど。テンションが上がり過ぎちゃって、涙腺がキュッと締まっちゃったのかな」と照れた。

 次走は未定だが、今後は受けて立つ立場となる。主戦は「G1馬に恥じない結果を出していける馬」と胸を張った。鞍上と馬。そして関係者。固い“絆”が導いたG1タイトルを手に、新ダート王はさらに輝きを増していく。

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