アンカツ 完全燃焼!笑顔でさよなら
さらば、アンカツ‐。3日の京都競馬場の最終12レース終了後、“中央移籍の先駆者”安藤勝己騎手(52)=栗東・フリー=の引退セレモニーが行われた。76年に笠松所属として16歳でデビュー。地方・中央で通算4464勝、JRA・G1で22勝を挙げた名手は、競馬関係者や家族、そして最後の勇姿を見届けに来た約3600人のファンの前で、36年4カ月に渡る現役生活に別れを告げた。
既に気持ちの整理はついていた。衝撃の引退発表から4日が経過。着慣れた勝負服ではなく、グレーのスーツ、薄いブルーのネクタイに身を包んだ安藤勝は、淀のスタンドから初めて競馬を俯瞰(ふかん)した。「上で見ていると直線は短く感じるね。乗っている方が長く感じる。寂しさ?ないね。“きれいだな”と思っていたよ」と表情は晴れやかだった。
完全燃焼。未練はない。セレモニーでは「声援に応えることができなくなったので、引退を決めました。今まで本当にありがとうございました」とファンへ感謝の言葉を口にした。武豊、兄の光彰氏など関係者から続々と花束が贈呈され、最後に長女の早哉香さんからねぎらいを受けると、涙はなく、照れくさそうに笑顔を見せた。ファンの言葉がつづられたメッセージノートも贈られ、スタンドからは暖かい拍手が巻き起こった。
公営・笠松競馬からJRAに移籍して10年。「本当に早かったです。レースでは初めてG1を勝たせてもらったビリーヴの高松宮記念(03年)、馬ではダイワスカーレットやキングカメハメハなどが思い出に残っています」と振り返った。見守り続けてきた家族には「無事に騎手生活を終えることができました」とやさしく言葉をかけた。
最後は騎手仲間24人が胴上げ。少しふっくらとした体が、4回宙に舞った。「“今までで一番重い”って笑われたよ」と顔を真っ赤にして満面の笑みを浮かべた。
今後の活動は未定だが「解説などの話は来ている。とりあえず1、2回はやってみようかな。やって駄目ならやめるよ」と最後は“アンカツ節”がさく裂。時代を切り開いた先駆者が、第3の競馬人生を歩み出す。