【競輪】小松崎は野球から転身の苦労人
「共同通信社杯・G2」(26日開幕、福井)
26日から29日まで福井競輪場で開催される「G2・第29回共同通信社杯」は“若手選手の登竜門”と位置づけられており、強豪メンバーとともに、将来を担う有望株も出場する。今回紹介する小松崎大地(30)=福島=は野球の四国アイランドリーグ・徳島インディゴソックスの主力選手から転身した。また河端朋之(28)=岡山=は世界の舞台でも活躍する“エリート”。夢を追い新天地で飛躍した苦労人と、世界の強豪と渡り合った日の丸レーサーが激走を見せる。
ガムシャラに プロ野球の夢を断念して競輪選手としてデビューしてから2年3カ月。小松崎がビッグレースの舞台に立つ。「ただガムシャラに走ってきた。やっと自分のレースができて、力を出し切れるようになった」と成長を確信する。
小学校時代から野球一筋。プロになりたい‐。夢をかなえるために05年、四国アイランドリーグ・徳島インディゴソックスに入団した。当時は練習設備が整っておらず、吉野川の河川敷を借りることが多かった。寒風吹きすさぶ中、バットを振り、仲間とボールを拾った。不動の4番打者として活躍して主将も務めた。08年には日本ハム、ロッテの入団テストで好結果を残したが、ドラフト会議で指名されることはなかった。
野球選手としての限界。そんな中、徳島のジムで競輪のトップレーサー・小倉竜二、阿竹智史と出会い、競輪に興味をもつ。そしてトップ選手として活躍する岡部芳幸(福島)に巡り合う縁があった。「父親が新日鉄君津の助監督をしていた関係でOBの下柳剛さんを通じて、親交のあった岡部さんを紹介してもらいました」。応援してくれる人が多い徳島より、福島を登録地に選択。すべての甘えを断ち切り、新たな世界に飛び込んだ。
ハンドルを握りペダルを踏む。全く異なる世界だった。「最初はついていけなかった。バンクでも街道でも。本当に悔しくて苦しくて。身体能力では兄弟子の皆さんと比べても勝っているのに…」。それでも岡部が「苦労して競輪界に入ってきただけに士気が高い」と評価するひたむきさで厳しい練習をこなした。
11年1月のデビュー後、2月には初優勝。昨年2月には9連勝(3日間開催を3場所連続して1着)してトップランクのS級へ特別昇進した。「壁に当たっても、ひとつずつクリアできている」と階段を上がってきた。昨年末、若手の成績優秀者が選ばれる「ヤンググランプリ」に出走。そして今回の「共同通信社杯」に出場することになった。「誰が相手でも自分は間違いなく挑戦者。同じ場所にいたら進歩はない。次の課題が見つかるはずなので、しっかりと走りたい」。大言壮語はしない。舞台がスタジアムからバンクになっても、変わることのないひたむきさ。自分の可能性に挑戦する4日間が間もなく始まる。