【凱旋門賞】キズナ見せ場も無念4着

 「凱旋門賞・仏G1」(6日、ロンシャン)

 世界の分厚い壁に阻まれた。武豊を背に、同年の日本ダービー馬として初めてロンシャンの頂上決戦に臨んだキズナは4着。勝負どころで早めに動いて見せ場をつくったが、最後は力尽きた。それでも前哨戦のニエル賞を制して華々しい世界デビューを果たすなど、今回の遠征がナイストライだったことは間違いない。東日本大震災からの復興を願って命名されたディープインパクト産駒のチャレンジは、このあとも続いていく。

 昨年の凱旋門賞当日に京都競馬場でデビューしてから、ちょうど1年。日本ダービー馬という称号を得て、世界の頂上決戦にまで駒を進めたディープインパクト産駒の挑戦は4着に終わった。キズナは中盤まで後方2番手で折り合い、勝負どころでオルフェーヴルを外からフタをする格好で勢い良く進出。見せ場は十分につくったが、最後は脚勢が鈍ってしまった。

 海外遠征そのものを含めて初物ずくめのなか、前哨戦のニエル賞をV。華々しい世界デビューを決めたことで注目度は日増しに高まっていたが、大目標の一戦では世界の壁を突き破れなかった。

 競馬ほど地の利があるスポーツはないと言われる。アウェーで勝つことの難しさは、世界中を飛び回る武豊が誰よりも分かっている。凱旋門賞初騎乗は94年。英国馬ホワイトマズルで6着に敗れ、地元メディアから強烈なバッシングを受けた。

 「日本人の25歳の若造が、ってね。悔しかった。いつか勝ちたいと思った」。ディープインパクトで挑戦した06年(3位入線も禁止薬物検出のため失格)は、今でも夢に出てくる。いつかディープの子で凱旋門賞へ‐。夢の続きがあることを信じてチャレンジ精神を持ち続け、6度目の凱旋門賞に挑んだ。「世界は強いな」。名手はレース後、そう言って大きく息を吐いたが「ぜひキズナで来年、また挑戦したい」と力強く前を見据えた。

 たくさんの固い“絆”があった。「分かってるな?」。日本を出発する直前、鞍上は、お互いに手腕を認め合う関東の名手・横山典にそう言って背中を押された。また凱旋門賞4勝のペリエとは、凱旋門当日のロッカーがいつも隣同士。地元のトップ騎手が「自分が勝てないならユタカに勝ってほしい」と願うほどの仲だ。オーナーには成績浮上のきっかけをもらった。凱旋門賞Vで恩返しを誓った名手だったが、今回はかなわなかった。

 まだ3歳。来年、リベンジすればいい。それは11年に発生した東日本大震災からの復興を願って命名された日本ダービー馬の使命なのかもしれない。たくましさを増し、きっと世界の頂点への扉を開いてくれるはずだ。

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