【凱旋門賞】オルフェ牙城崩せず2着
「凱旋門賞・仏G1」(6日、ロンシャン)
69年スピードシンボリ(着外)の初挑戦から44年、日本競馬界の悲願は今年も実らなかった。昨年2着のリベンジを目指したオルフェーヴル(牡5歳、栗東・池江)は、懸命に脚を伸ばしたがまたしても2着。また今年の日本ダービー馬キズナ(牡3歳、栗東・佐々木)は後方から末脚を伸ばしたものの4着に敗れた。勝ったのは地元フランスの牝馬トレヴ。デビューから無傷5連勝となった。欧州調教馬以外は1頭も勝ったことのない、世界最高峰の一戦。今年も牙城は崩せなかった。
またしても夢には届かなかった。昨年に続きV最有力候補として出走したオルフェーヴルだったが、勝利とはこれほどに遠いものなのか。過去91回、1度も欧州以外の調教馬が勝ったことがない伝統の一戦。重い重い歴史の扉は今年も開かれることはなかった。
(8)枠から発進したオルフェーヴルはスタート直後こそ馬群に囲まれたものの、すぐにスミヨンが誘導して外めのポジションを確保。欧州馬の包囲網をかいくぐり、課題の折り合い難もクリアして流れに乗った。だが、勝負どころで再び試練が降りかかる。武豊キズナを含め、外から進出してきた各馬にふさがれ、身動きが取れない。直線半ばで強引に進路を確保して懸命に脚を伸ばしたが、既に地元フランスの無敗牝馬トレヴは抜け出していた。届いてくれ‐日本のファンの願いもむなしく、昨年と同じく銀メダルに終わった。
昨年は独走態勢に持ち込んでから内にもたれて、ゴール寸前で快挙を逃した。帰国直後、池江師は言った。「この1年間はオルフェーヴルを真っすぐに走らせる1年です」‐。リベンジのための矯正が始まった。角馬場でのフラットワークでは、つる首のまま駆け出させず、馬場馬術で見るようなリズム良い常歩で乗る。競走馬は体を伸びきって速さを求める。対して馬術では時に体を縮め、型にはまった動きが求められる。伸長と収縮は対極。現役競走馬に収縮を教えることは大胆な挑戦だった。
今春は肺出血で宝塚記念を回避。8月末の渡仏後も帯同馬に蹴られ、外傷性の鼻出血を発症するなどアクシデントが続いた。だが、これまでがそうだったようにオルフェーヴルは苦難を乗り越えるたびに、たくましさを増し、池江師の難行の成果も形になって表れてきた。そして前哨戦のフォワ賞では、抜け出してからも真っすぐにゴールを目指して完勝。ついに日本競馬の悲願達成の瞬間が訪れると思われたが…。
「精いっぱいやってきて力は出し切った。勝った馬が強かったとしか言いようがない。欧州馬の底力をまざまざと見せつけられた」。無念の表情で完敗を認めた池江師だが、前を見据えてキッパリと言い切った。「勝つまで挑戦を続けていきます」。歓喜の結果には、たどり着けなかった。しかし、この1年間に流した汗と情熱は、いささかも色あせることはない。そして、頂を目指す日本馬の挑戦は続いていく。