【エ女王杯】角居師、超強力“四重奏”

 「エリザベス女王杯・G1」(10日、京都)

 自身初の“4頭出し”で節目の勝利をもぎ取る。史上2人目のJRA・G1・20勝にリーチをかけている角居勝彦調教師(49)=栗東。快挙達成へ向けて、敏腕トレーナーは実力馬4頭を秋の女王決定戦に送り込んできた。超強力布陣で新たな勲章の獲得を狙う。なおこの日、出走馬18頭が確定。枠順は8日に決まり、馬券は9日に前日発売が行われる。

 藤沢和師(21勝)以来となる史上2人目の中央G1・20勝へ、角居厩舎が4本の矢を放つ。「どの馬を一番見ればいいんだろ」と指揮官は悩ましい心情を口にしつつ、「それぞれ状態がここにきて上がってきた。面白いレースになる」と大一番を心待ちにする。

◆ディアデラマドレ母の夢を末脚で

 思い入れという点ではディアデラマドレが一番強いかもしれない。母ディアデラノビアは初期の角居厩舎を支えた名牝。破壊力満点の末脚で重賞3勝を挙げた。「2走前から“母の子だなあ”というのを感じた」。ここ2戦はともにメンバー最速の上がり3F33秒1の末脚を繰り出して連勝を決めた。

 本格化の一端を担ったのはコンビを組んで2戦2勝の藤岡康だ。トレーナーは「彼を乗せてからこういうスタイルの競馬になったよね。彼女の脚質を見つけてくれた」と感謝する。思い切りを売りとする24歳のホープが、乙女の秘めた能力を引き出した。

 「またがった時から“いい馬だな”と感じました」と初コンタクトの瞬間を振り返る藤岡康。「母は気難しかったイメージがあるんだけど、この子は素直ですよね。スローでも折り合いはつく。リズム良く走らせてあげたい。ええ、一発狙っていますよ」と立場は準オープンでも、気後れする面は見られない。

 一線級で活躍した母も、G1は3着(3回)が最高で、頂点には至っていない。「この子も素晴らしい切れ味を持っている。(脚質的に)ドキドキするけど、最後はきてほしいね」と笑ったトレーナー。母の成し遂げられなかった夢を子がかなえる。節目の勝利にふさわしいドラマが待っているかもしれない。

◆オールザットジャズ漂う一発ムード

 角居勢で一発ムードを漂わせているのが、唯一の古馬オールザットジャズ。エリザベス女王杯には今回で3年連続の参戦だが、11年(15着)と12年(5着)は涙をのんできた。「去年は早めに抜け出したんだけどね。馬場が悪いなか頑張った」と師は振り返る。ここ2年、結果が残せなかったことを踏まえて今年はローテを変更。京都大賞典(9着)をステップに挑む。「同じ京都の外回りを選んだ。バルザローナにも期待」と世界の名手にG1初制覇を託した。

◆デニムアンドルビー調整過程に自信あり

 角居厩舎の3歳勢では実績最上位となるデニムアンドルビー。オークス(3着)に秋華賞(4着)とともに1番人気を裏切っているだけに、陣営が今回にかける思いでは4頭のなかでも一番だろう。「前走後の回復が思いのほか早かった。いい状態で臨める。カイバを食べる馬だから、ちゃんと調教もやれている」と師は調整過程に自信の表情。「コース形態が(内回りから外回りへ)変わるのはいい。週末は雨?この馬は苦にしないよ」と条件的にも申し分ない。

◆ラキシス条件馬でも侮れない

 ひと言で表現すればセンスの良さ。展開不問で器用な立ち回りができることが、ラキシスのセールスポイントだ。春とはレースぶりが一変。500万下‐1000万下と勝利を重ねてG1に臨む。

 角居師は「春はカイバを食べられなかった。今はカイバを食べてくれているので、調教で負荷をかけられる。中身が変わった」と成長ぶりに目を細める。期待のディープインパクト産駒が実りの秋を迎えて軌道に乗った。

 川田とのコンビでは3戦3勝。トレーナーが「手の内に入れている」と全幅の信頼を寄せるように、抜群の相性を誇る。鞍上は「自分のリズムで走れるのが一番」とその操作性を高く評価。格負けはしない‐。勢いのある上がり馬がさらに加速する。

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