【朝日杯FS】エクスプレス初芝で戴冠
「朝日杯FS・G1」(15日、中山)
中山での最後の2歳王者決定戦(来年からは阪神)を制したのは、4番人気のアジアエクスプレス。直線で末脚を伸ばし無傷V3での戴冠を決め、今年のヴィクトリアマイルから続いた関東馬のJRA・G1連敗記録を「14」で止めた。芝未勝利馬の芝G1制覇は84年のグレード制導入後初の快挙で、鞍上のムーアはゴールドシップと初コンビを組む有馬記念(22日・中山)へ弾みをつけた。2番人気の地方馬プレイアンドリアルは7着、またJRA平地G1完全Vを狙った武豊のベルカントは10着に敗れた。
初めての芝も何のその。剛腕ムーアの左ステッキに応え、アジアエクスプレスが外から一気に突き抜けた。
ダート2戦2勝。新馬戦が5馬身、2戦目が7馬身差でのVと、圧倒的なパフォーマンスを見せての芝初挑戦だった。「正直、いきなりG1では」と手塚師にも不安はあったが、それを一掃する鮮やかな勝ちっぷり。「いやあ、してやったりという気持ち。うれしいですね」と期待以上の走りに笑みが絶えない。
道中は中団の内々を追走。「枠も良かったし、最短距離を走れればいいなと思っていたが、イメージ通り」とイギリスの名手は振り返る。4角手前で徐々に外へ持ち出すと、直線は大外へ。急坂を駆け上がると、先に抜け出したウインフルブルーム、ショウナンアチーヴに襲いかかった。「4角からのスピードが違っていたので、差せる確信はあった」。並ぶ間もなく抜き去ると、無傷の3連勝で2歳王者の座を射止めた。
全日本2歳優駿・G1(18日・川崎)にも登録していたが、除外になったため、未知の世界へ踏み込んだ。芝未経験馬による芝G1制覇は、84年のグレード制導入後初めての快挙だ。「現状ではダートの方がいいけど、まだまだ伸びしろはある。弱点があまりないし、芝もダートも走れる馬はそうそういない。特別な馬だね」と鞍上はパートナーを褒めちぎった。
ジャパンCのジェンティルドンナに続くVで、ムーアは日本でのG1勝利は4勝目。有馬記念ではゴールドシップの復活を託されている。「来週もいい結果を出せるように頑張るだけ」。“V請負人”は、いつものポーカーフェイスで大一番への意気込みを語った。
芝で頂点に立った栗毛の外国産馬は、今後どの路線を歩むのか。「クラシックも含めてオーナーと相談してから。ただ選択肢が増えたし、夢が広がったのは確かだね」とトレーナー。その未来は無限の可能性を秘めている。