【ダービー】イスラ2着「枠順の差」
「日本ダービー・G1」(1日、東京)
22回目の挑戦。数限りなく夢を見、ついに手が届きかけた日本ダービーのVゴールが非情にも逃げて行く。ラスト400メートル、イスラボニータは押し出される形で先頭に立った。その瞬間、ワンアンドオンリーが外から襲う。必死に抵抗したイスラだが、残り50メートルで力尽きた。
「枠順の差」。蛯名は悔しさを押し殺し、第一声を振り絞った。「内がいい馬場。こっちは外の分、楽に入って行けなかった。枠が逆なら着順も逆だった」と続けたが、負け惜しみとは言い切れない。
スタート直後、外からトーセンスターダムが押して先行策を主張する。前に入られ、内のエキマエとの間に挟まれたからか、行きたがった。蛯名は懸命になだめるが2角まで折り合いに苦労。その分、エネルギーをロスした。さらに3角過ぎでエキマエが競走中止。2番手となり、タメが利かなくなった。
想定外のことが2つ重なり筋書きが壊れた。「やるべきことは全てやった。かわされても馬は抵抗したし、負けても強い内容。秋にリベンジしたい」。蛯名はショックを強じんな意志で振り払い、前を向いた。
敗軍の将、栗田博師は冷静にレースを振り返った。「馬はよく頑張ってくれた。正義(蛯名)も苦労しながらなだめて乗ってくれた。皐月賞とは逆の立場。勝ち馬の目標にされた分の差が出たと思う」。
力負けではないが、馬には生涯一度のチャンスを逸した。ついに悲願を達成した橋口師とは対照的な絵図。競馬の神様は時に、ドラマチックで残酷な演出をする。