【ダービー】オンリー橋口師、大願成就

 「日本ダービー・G1」(1日、東京)

 通算20頭目、そして18度目の挑戦でついに夢をかなえた。3番人気のワンアンドオンリーが鮮やかに好位差しを決め、11年生まれの3歳馬の頂点に立った。これまで競馬の祭典で2着が4回だった橋口師は悲願の初制覇。また横山典は、09年ロジユニヴァースに続き2度目の美酒となった。90年メジロライアン(2着)以来、24年ぶりに関東馬で1番人気に推されたイスラボニータは2着に惜敗。初Vを目指した蛯名の悲願は、来年以降に持ち越しとなった。

 目は充血していた。しかし、涙はなかった。ワンアンドオンリーが、調教師生活34年の橋口師の悲願“ダービー制覇”をかなえてくれた。検量室前で関係者から祝福攻めにあい、殊勲の横山典とは熱い抱擁。自然とできあがった歓喜の輪の中心で、師の穏やかな笑顔の花が咲く。そして、表彰式に現れたトレーナーを、14万人の観客からの温かい“橋口コール”が包んだ。

 「ダービーは格別やね。(何度も悔しい思いをしてきて)もう涙は枯れたけど、地に足がついていない。後にも先にもこんなことはないよ。ほかの大レースも勝たせてもらったけど、やっぱり違うね。もう(調教師を)辞めてもいいくらい。競馬人生最高の日だよ」。

 果敢に好位を奪う作戦をとった横山典に「レース前は何も言うまいと決めていた。彼は感性で乗る騎手。全てを信頼していた」。直線で皐月賞馬と並ぶと、思わず立ち上がった。「久々に声を出して応援した。追い合いなら負けない自信はあった」。祈りが届き、見事に愛馬は栄光のゴール板を射抜いた。

 定年まで残されたチャンスはあと2回。「きょうみたいな緊張は初めて」と明かした師は、大一番で着ける青いネクタイを締めて臨んだ。ワンアンドオンリーの父ハーツクライがディープインパクトを破った05年有馬記念の時と同じものだ。「ハーツと同じ気持ちを込めてね」。ダービーは04年の父を含めてこれまで2着が4回。ついに大願を成就した。

 そのハーツと挑んだ英国の06年キングジョージ‐。結果は3着だったが、今もパドックに引き揚げてきた時のことが忘れられない。「みんな拍手で出迎えてくれるんだよ。よーし、また来年も来るぞと思ったね。けど、それはかなわなかった。その時から、今度はハーツの子で、と思っていたんだ」。

 ワンアンドオンリーが栗東に初入厩し、ちょうど1年後の14年6月1日。ダービー制覇という師の夢に日付が刻まれた。「もっと鍛え直して、挑戦できる成績を残していければ最高だね」。夢の続きは父子2代の英国遠征で‐。橋口師は“唯一無二”の壮大な目標に向かって走り続ける。

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