【阪神JF】ココロノアイ血脈育んだ
「阪神JF・G1」(14日、阪神)
09年のアパパネ以来、5年ぶりの関東馬Vへココロノアイが勇躍仁川へ乗り込む。母系をたどれば87年の2冠牝馬マックスビューティがいる血統。前走のアルテミスSは掛かりながらも鼻差で勝利を収め、能力の高さを見せた。3連勝で2歳女王の座へ駆け上がる。
ココロノアイの曾祖母は87年桜花賞、オークスを制したマックスビューティ。生産者の酒井牧場の2代目、酒井公平さんはこの牝系を育ててきた。
独自のパソコンソフトの開発にもかかわった。酒井牧場を代表する名牝ホクトベガ(重賞13勝)は、パソコンを駆使しての配合だった。理想の血をどこまでも追い求める生産者だ。
公平さんは「ビューティの牝馬はマックスジョリー(93年桜花賞3着など)1頭。牝系を絶やすわけにはいかない。自分が中心となって輸入したデインヒルとジョリーを交配したんです」と振り返る。だが、お産の時に子宮動脈が破裂した。間一髪、母が命と引き換えに残したのがココロノアイの母ビューティソングだ。
「ビューティソングはジョリーの唯一の形見。子出しはいいが、大きい子が生まれる。そこで小さい子が出やすいステイゴールドを付けました」。だが、生まれたココロノアイを最初に見た時は「前肢が右、後肢は左を向いていた。売り物にはならないから、牧場名義で走らせることにしたんです」と正直がっかりしたという。
ところが、その症状は当歳秋にはほとんど治った。人知を越えた、強い生命力を持っていたのだろう。「運のある馬。体の幅があって腹袋、胸囲にも恵まれている。牧場時代はおとなしくてコントロールのしやすい馬でした」。
競走馬になってステイゴールドの血が騒ぎ出したのか。アルテミスSではガツンと掛かった。それでも鼻差でV。秘める能力は半端ではない。衰退しかけた血脈の復活へ-。今回のココロノアイには、前向き過ぎる気性の克服という自分との戦いが待っている。