【ボート】史上初「母VS娘」実現へ

 プロの舞台で母と娘が“ガチンコ対決”-。5月にボートレース第116期生としてプロデビューを果たした大山千広(19)=福岡・B2。彼女は現役のボートレーサーである大山博美(49)=61期・福岡・B1=を母に持つ。数あるプロスポーツの中でも、めったにお目にかかれない母VS娘の図式。今回は、親子でありライバルとなったこの二人にスポットを当てた。

 母は現役のボートレーサーとして活躍する大山博美。そして、母と同じ道を選んだ娘の千広。この春、ボート界唯一となる“母娘レーサー”が誕生した。

 5月、地元の福岡ボートでプロとしての第一歩を踏み出した千広。だが、幼いころはボートレースが嫌いだった。「一番そばにいてほしいとき、母はレースに行っていなかったので…。いつもおばあちゃんと一緒でした」。仕事と分かっていても、幼い心では母を“奪った”ボートレースを好きになることはできなかった。

 その気持ちに変化が起きたのは小学校4年生のとき。そして、その変化を与えたのは戦う母の姿だった。「レースを見て、男子を相手に勝つ母がかっこよかった」。心が動いた。そしてこのときから、心の中にしっかりと自分の“未来”を描き始めていた。

 中学、高校時代は陸上部に在籍。体力強化に励み、未来への準備を着々と進めていた。ただ、母へはなかなか言いだせなかった。「レーサーになりたい」と初めて自分の口から伝えたのは進路の話題になったとき。反対はされなかった。そして、高校卒業を待ってボートレーサー養成機関「やまと学校」を受験。難関とされる試験。「正直、一回目で受かるのは難しいと思っていた」と話すも、見事一発で合格を決めた。

 厳しいと言われる養成所生活も「ボートに乗るのが楽しくて仕方がなかった」と笑顔で振り返る。その結果が、男子を相手に回しての在校2位という堂々たる成績。教官も「訓練後期で飛躍的に向上しましたね。旋回のキレ、スタート力はこの期のトップ。体重管理さえしっかりすれば、間違いなく女子王座までいける」と、能力に太鼓判を押す。

 遠くない未来に実現するであろう“母娘対決”。「楽しみです。しっかり舟券に絡んだ位置で勝負したい。そしてもちろん勝ちたいです」と早くも“ライバル”心を燃やす。憧れの母の背中を追い、そしてその先へ-。この道へ進むきっかけとなったあの日の母のように「男子相手でも勝てる選手に。そして女子のナンバー1になりたい」。でっかい夢を追う19歳の戦いが始まった。

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