競馬界にも薬物問題…外国人騎手精査を
スポーツ界の悪い流れに乗ったわけではないだろうが、競馬界にも薬物問題が普及した。JRAは11日、短期免許で来日中のルイス・コントレラス騎手(29)=メキシコ=から、禁止薬物のオキシコドンが検出されたと発表。裁定委員会の議定があるまで、騎乗停止処分が下された。
オキシコドンは国内でがん患者等以外には処方されない、非常に強い鎮痛剤。コントレラスの活動拠点となっている北米では医者が処方するケースも少なくないようだが、米国では乱用が問題視されている医療用麻薬である。IFHA(国際競馬統括機関連盟)は禁止薬物に指定し、服用しながらの騎乗は認められていない。恐らく当人は純粋に痛み止め目的の服用と思われるが、プロとしてはあまりにずさん過ぎる行為と言えよう。
翌日の美浦トレセン。某ジョッキーは記者に対し、「騎手として基本的なことすらできていない。こういう外国人に免許を与えているJRAは、責任を取らないでいいのかな。“今後はより徹底した指導をしたい”では済まされないように思う」と口にした。他の関係者からも同様の声を耳にしている。
数年前から短期免許で来日する外国人騎手が増加傾向(現在は同時期に5人まで)にあり、11年からはJRAの通年免許取得も可能となった。国際化の流れを思えば致し方ない流れ。その影響で若手には厳しい時代だが、見方によってはライアン・ムーアといった超一流騎手の騎乗を間近で見る貴重な機会であり、日本人騎手のスキル向上につながる側面も持つ。
一方、以前と比較して意識の低い外国人騎手が増えてきたように感じるのも事実だ。今回の薬物問題しかり、体重オーバーで騎乗できないといった事象はプロとしてあるまじき行為。世界的に知名度がなく、ゆえにトップの賞金を誇る日本に“ただ稼げるから来た”だけのジョッキーは、JRAが長年にわたって築いてきた公正競馬を揺るがす存在になり得る。
無論、そうでないジョッキーも存在する。例えば14年の夏に来日したイタリアのマリオ・エスポジートは日本でも全く女遊びなどはせず、ひたすら日本の競馬で技術の獲得に努めたそうだ。ネームバリューは全くなくとも、その姿勢を評価する関係者は多かった。門戸を狭めるのではなく、しっかりと人間性を精査した上で免許を交付すべきだろう。
公正競馬をうたうJRAの管理能力は間違いなく世界でナンバーワン。なんだかんだ言いながらもファンからの信頼は厚い。安心して馬券に大枚をはたける環境は素晴らしく、だからこそここまで発展を遂げてきた。それだけに今回の件は実に残念。信用を失わないためにもまずは主催者として責任の所在を明確にし、その上でさらなる進歩を目指してほしいものだ。(デイリースポーツ・豊島俊介)