日本独自の調整ルーム 女性騎手リサ・オールプレスが語る日本と海外の競馬の違い
10月2日のフランスのシャンティ競馬場で行われる凱旋門賞。このレースから日本での海外馬券発売開始となり、これまで以上に海外競馬に関心を持つファンは多くなるだろう。今回は日本と海外競馬のちょっとした違いについて触れてみたい。
情報を提供してくれたのは現在、短期騎手免許で来日しているリサ・オールプレス騎手(41)=ニュージーランド。取材している過程の中で話題に上ったのが調整ルームについてだ。調整ルームを説明すると、JRAホームページでは、「各競馬場、栗東、美浦両トレーニング・センターに設けられた、騎手の宿泊施設。競馬の公正の確保を期し、また心身の調整を図ることを目的として競馬開催の前日に、騎乗予定騎手全員が入室することが原則として義務付けられている」と説明してある。これは海外の競馬主要国には存在しないものだ。
記者の個人的な感想を述べると、競馬前日から缶詰め状態となり、何かと息苦しさを覚えるのではと思っていたが、リサは「非常にいいシステムだと思っている。前日から調整ルームに入ることにより、レースに集中できる」とうなずく。この背景には日本では考えられない海外事情がある。リサを含め外国の一流騎手は世界各国を飛び回り、競馬に騎乗する。アイルランドで騎乗した数時間後には英国で騎乗することもまれではない。
リサも「移動にどうしても時間を要してしまう。3時間しか寝ることができずに競馬場で騎乗し、その翌日も遠く離れた違う競馬場へ行かなければならないこともある。そうなると体調管理が難しくなる」と状況を語る。その点、日本では調整ルームのおかげでレース前日からしっかりとコンディションを整えることができる。日本では当たり前のシステムも外国人ジョッキーにとっては斬新なようだ。
そんなリサに日本での目標を聞くと、「ジャパンCに騎乗したい。母国ニュージーランドでも有名なレース。できれば日本の馬でチャンスをいただけたらうれしい」と前を向く。今年の短期免許は申請段階で10月23日までとなっているが、3カ月の騎乗期間を踏まえると調整次第ではジャパンCへの騎乗は可能。競馬と真剣に向き合う彼女が、ジャパンCの大舞台で躍動する姿を見てみたい。(デイリースポーツ・小林正明)