【スプリンターズS】レッドファルクスがG1初V 「すごい!」ミルコも驚く成長力
「スプリンターズS・G1」(2日、中山)
競馬界にも“二刀流”の到来だ。ダートでも4勝を挙げる3番人気のレッドファルクスが、ゴール前で外から強襲。懸命に逃げ粘る2番人気ミッキーアイルを頭差とらえ、G1初挑戦にして芝スプリント界の頂点を射止めた。3着には3歳牝馬の9番人気ソルヴェイグ。単勝1・8倍の断然人気に推されたビッグアーサーは、直線で進路を失い12着に惨敗した。
白い馬体が最後の急坂を力強く駆け上がる。2連勝の勢いで挑んだ初の大舞台。臆することなく、レッドファルクスがスプリント王の称号をもぎ獲った。「素晴らしい!すごい!」。開口一番、まくし立てたM・デムーロ。これでコンビを組んで3戦3勝。「未勝利を勝った時(14年3月=中京)はこんな馬になるとは思わなかった。どんどん良くなっているね」と、相棒の成長力に目を丸くした。
課題のスタートも決まり、道中は中団の外めを追走。4角手前で大外から早めに先団へ並びかけた。「ズブいところがあって、直線も短いので早めに外へ出した」。その判断が奏功。逃げ粘るミッキーアイルを頭差とらえた瞬間、左腕でガッツポーズをつくって喜びを爆発させた。
レースの直前に、ミルコと尾関師との間にこんなやり取りがあった。「先生はG1を勝ったことがあるの?」「いや、まだないです」「じゃあ頑張ってくる!」-。有言実行のイタリアンが振り返る。「テンションを高めるために言ったんだ。本当に勝てて良かった」と満足そうにうなずいた。
開業8年目で待望のビッグタイトルを手にした師は感無量。「正直、まだ実感はないです。うれしいやらビックリしたやらで。G1を勝つ馬をやらせていただいて…」と言ったところで声を詰まらせた。「いろいろ思い出してしまってね。“スタッフが頑張ってくれた”と言おうとしたら…」と瞳を光らせた。
もともと左トモが弱かった馬。それもあって左回りを専門に使われてきたが「昨年、準オープンを連勝したあたりからしっかりしてきた。全体的に力をつけてきたんですね。でも、G1を勝つまでとは…馬に謝りたい」と笑顔が戻った。
3連勝で芝のスプリント界を制圧したが、ダートでも4勝を挙げる“二刀流”だ。「香港や川崎のJBCと選択肢が広がりますね」。芝ダートを問わずに暴れまくる愛馬の姿に思いをはせながら、トレーナーは勝利の余韻に浸っていた。