サブちゃん「歌っちゃうよ」キタサンブラックへの思い語った
「有馬記念・G1」(24日、中山)
『ま~つりだ、まつりだ、まつりだ、キタサンま~つ~り~』-さあ、行くゾ!昨年に続くファン投票1位に選出されたキタサンブラック(牡5歳、栗東・清水久)が、いよいよラストランを迎える。馬主歴50年以上で、自身初のG1ホースに出会ったオーナーで演歌界の大御所・北島三郎(81、名義は有限会社・大野商事)が、今の心境、そして“自分の息子”とまで言う、愛馬への熱い思いを語った。
-いよいよラストランを迎えました。
「あと数日でお別れなんだな、アイツの走る姿を見るのも最後なんだな、と思うと寂しくなるね。でも決めたことだからな」
-有馬記念は前2年3、2着。いずれも惜敗。
「運否(うんぷ)天賦。引きずるのは好きじゃない。負ければ悔しい。でも勝負の世界だから。“きょうは運がなかった”と思うようにしている」
-今年こそは。
「3歳で3着、4歳で2着。順番からいけば1着か(笑)。だけど、そんなことは考えていないよ。一昨年の1月31日に府中でデビューしてから、あっと言う間の3年間だった。そのわずかの間にすごい成績を残してくれた。感謝している。最後もみんなと無事に走って来てくれたら、何着かは関係ない。『無事之名馬』。一度も医者にかかったことがない馬なんだ。すっげえ、感謝しているよ」
-G1初制覇は15年の菊花賞。3000メートルの距離が不安視されるなかでのVだった。
「血統的(母父が短距離系のサクラバクシンオー)に距離が長いとか言われたけど、突然変異なんだ、と思っている。オレだってきょうだいが7人いるけど、歌手になったのはオレだけだからな。これも突然変異だよ(笑)。格好良くなったね。二枚目で、石原裕次郎みたいだよ」
◆13年末、50回出場したNHK紅白歌合戦を卒業。15年1月には46年間、4578回続けてきた座長公演に幕を下ろした。55年にもおよぶ歌手人生。少しずつ荷を下ろし始めた時に登場したのがキタサンブラックだった。
また、昨年夏にはホテルと自宅で転倒して古傷の首を痛め、頸椎(けいつい)性脊髄症と診断されて手術。その直後にブラックがジャパンCを制覇。今年8月、白内障の手術を受けた直後には天皇賞・秋を勝った。
「“休んでなよ。あとはオレが頑張って走るから”って言われているようで。ホントに感謝しかない。神様がくれた宝物だね」
-最後に歌、『まつり』の熱唱は?
「歌ねえ、歌うんじゃなくて、歌わさせられちゃうだろうな(笑)。その場の雰囲気で思わず出ちゃうだろう。スタンドから“まつり!まつり!”って声が聞こえたら、何着かは関係なくね。応援してくれたファンの、そんな温かいものに触れたらねえ。人間ですから優しさには負けます。感謝の気持ちを込めて歌っちゃうよ!」
-改めて、これがラストラン。
「できることなら、あと1年延ばせばよかったかなって、ふと思うよ。歌手になってある時、おふくろがインタビューで“うれしいけど、寂しいような。北島三郎になったと同時に、自分の子どもでなくなったような。皆さんの手で育ててやってください”ってね」
-当時のブラックと自分が重なる。
「そう、オレの“息子であって息子じゃない”。今は多くのファンが応援してくれているアイドルホース。引退させちゃっていいのかな。でも、オレの息子にこれ以上走らせてつらい思いをさせられない。花は咲かせたまま、新しい道へ進ませてやりたい。“引き際の美しさ”。種牡馬となって子どもを送り出したら、また応援してほしい」
-昨年に続いてファン投票1位。しかも、2位に過去最大の得票差をつけた。
「3歳の時から桁外れの票をもらって、アーッと言うのと、私の馬だけど、私の馬じゃない。そんな感じがするね。多くのファンが応援してくれている。ありがたいこと。万が一、もし仮に1着に入って来てくれたら、もちろん、みんな喜んでくれると思うけど、ビリッケツでも拍手で迎えてくれるかなあ。でも3→4着で来ていたら“5”だけど、3→2着だからね(笑)」