【馬主・北島三郎5】「ただものじゃない」デビュー戦で感じたブラックの実力

 「馬主・北島三郎5」

 2015年1月31日。デビュー戦は出遅れ気味にスタートして道中は中団で待機。最後は直線で抜け出し突き放す強い勝ち方。北島はキタサンブラックの実力に光るものを感じた。次戦の500万下は東京芝2000メートル。先行抜け出しで1着。そして3月22日のスプリングS(G2)で1着。これで確信に変わった。「この馬はただものじゃない」と。

 「1800とか2000メートルのレースを走り終えて疲れているはずなのに、全然息が乱れていない。相当心臓が強い。きっと大きなレースを勝てる」

 実は、体が大きく本格化に時間がかかると判断。デビュー前にクラシック登録をしていなかった。だが、3連勝で皐月賞の優先出走権を得たことで追加登録料200万円を支払い、クラシック路線に乗った。

 「この馬ならG1も狙える」。そんな北島の手応えとは逆に、当時、この馬に関しての評価は高くなかった。言われていたのは距離不安。母父のサクラバクシンオーが短距離馬だったことからだった。だが、レース後のケロリとした姿を知るだけに「この馬に距離は関係ないよ」とずっと言い続けた。

 G1の皐月賞で3着に入っても、さらに距離が延びるダービーに向けてはさらに不安の声が目立つばかり。そんな声に対抗するかのように、夢のG1勝利に向け、ひそかに自信を持っていたのだ。

 ずっと「G1を勝ったら、オレは競馬場で歌うよ」と言い続けていた。その気持ちは本気だった。ホースマンの憧れの大舞台、5月31日の日本ダービー当日。代表曲「まつり」のカラオケを準備し、本業の音響担当者を初めて競馬場に呼んでいたのだった。レースはハイペースに巻き込まれ残念ながら14着。しかし、必ず勝つチャンスは来ると信じていた。=敬称略=

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