【有馬記念】武豊、オジュウと夢届ける 数々ドラマ作った名手が平成ラスト有馬でも
「有馬記念・G1」(23日、中山)
名手が“異端児”を語った。障害界のスーパーヒーロー・オジュウチョウサン(牡7歳、美浦・和田郎)で、有馬記念に参戦する武豊騎手(49)=栗東・フリー。年末のGPで数々の名勝負を演出してきた“4000勝ジョッキー”が、異例の挑戦を前に、オジュウの平地能力、レースへ向けての手応えを大いに語り尽くした。
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-いよいよ有馬記念。今年はオジュウチョウサンで臨む。
「1年前のキタサンブラックとは違う形で注目されている。ただ、当時よりも気楽ですよ」
-注目される理由は“二刀流”。
「デビューして芝で2回走ったけど、成績がいまひとつで。競走馬として難しいと言われた馬が新しい道でね。障害初戦はシンガリ負け(14着)して、でもそこから強くなるという…。そして、障害では無敵なのに、あえて平地に。“二刀流”挑戦というファンの気持ちをかなえた馬」
-初騎乗となった平地の再チャレンジ初戦を振り返って。
「ゲート入りで拍手が沸いたんだ。(一緒に乗った)江田(照)が福島の土曜の9Rでこんな歓声は長い騎手人生で初めてだ、って言ってたよ。重賞並みでしたからね」
-東京の前走も勝ち、平地2連勝。
「福島の道悪から今度は良馬場。どれだけ走れるのかと思ったけど、軽い馬場の方が走りは良かった」
-障害だけではなく、平地で結果を出す理由は。
「乗り味のいい馬。体がすごく柔らかいし。障害馬っぽくない。頭の低い走りで、これでよく(障害を)跳ぶなぁ、って感じ」
-父はステイゴールド。自身の手綱で01年ドバイシーマクラシック、香港ヴァーズなどを勝った。
「気性の難しい馬だったね。厄介な馬。でも強かった。オジュウもヤンチャで難しい馬だったみたいだけど、ボクは難しいと感じたことはない」
-今年の有馬記念は他にもお手馬がいた。なぜ、この馬を選んだのか。
「どれも乗りたかったけど、1頭しか乗れないからね。一番最初に声を掛けていただいたんです。昔から有馬が夢とおっしゃっていたので。オーナーの熱意も感じているし、ファンの声もあったし。ファン投票3位というのは、この馬に騎乗しようと思った大きな要素」
-手応えのほどは。
「前走も勝つには勝ったけど、1000万下で少頭数。恵まれた感じはある。ジャパンカップが(世界的なレコードで)速かったとはいえ、5秒違うから。さすがに有馬記念だから簡単ではないでしょうね。でも、ファンの夢があるし、面白いじゃないですか」
-香港で受けた騎乗停止処分により、23日がラスト騎乗に。いい形で一年を締めくくりたい。
「そう、有馬(デー)で終わり。また、今年も得意の枠順抽選があるからね(笑)。それも含めて見せ場をつくりたい。オジュウチョウサンは“暮れの中山”で強いからね」
-これまでも障害馬には乗ったことがある。
「オジュウチョウサンのクラスの馬はないけど。障害の免許はデビュー5年目まで持っていたんだ。デビューして間もないころ、(調教で)向こう流しを跳んだこともあるよ。障害は得意だった。“天才”と呼ばれていたんだから(笑)。実戦でも乗りたいと思ったけど、(兄弟子で現調教師の)河内さんから“危ないし、やめとけ”と言われた」
-歴代トップ3勝を挙げる有馬記念も今回が平成最後。
「名馬のラストランで勝たせてもらったり、思い出が多い。でも、あまりいい思いはしていないなぁ。悔しい2着がね。8回?かーっ…。スペシャルウィーク、スーパークリーク、メジロマックイーンも。マーベラスサンデーとか。もちろん、ディープもだし、いろいろあったな。(平成の)最後がオジュウ。有力馬に乗せてもらっているけど、悔しい方が大きい。“3勝しか”していない」
-90年オグリキャップが自身の有馬記念初制覇。
「ボクの中でも大きい。今でも語り継がれるし、この時期になると振り返らされる。そういうレース。思い出深いね。まさか勝つとは思わなかった」
-06年ディープインパクトもラストランのV。
「負けられない、負けてはいけないレース。自信がここまであると緊張もしなかった。最後だと思って味わって乗った」
-そして昨年はキタサンブラック。
「ラストランと分かっていると、花道を飾らせたいと思う。前の年は2着に負けていたから何とか勝たせたい気持ちがあった」
-オジュウチョウサンも人気がある。
「有馬記念が終わると、100円の単勝馬券にいっぱいサインを頼まれる(笑)」