「有馬記念・Ｇ１」（２３日、中山）

　内が欲しい－。その強い願いが届いた。２０日、公開枠順抽選が行われ、武豊が最内を引き会場のどよめきがなかなか収まらないなか、女優の土屋太鳳が引いた１１番目のボールはモズカッチャン。「内が欲しいですね。（引きの強い）ユタカさんに引いてほしい。怖い…」。壇上に立ったＭ・デムーロは緊張を解くようにジョークを飛ばしたが、左手でつかんだボールの中身は２枠３番。思わず顔を紅潮させて喜びを爆発させた。

　「外枠だと外々を回らされてしまう」。１９日の栗東トレセンでも内枠希望をアピールし、さらには「自分は引きたくない。嫌だ」とプレッシャーも吐露していた。しかし、好枠ゲットで気分も状況も一転。過去の有馬記念で最多１０勝をマークするラッキーナンバーを手にし、「最高ですね。前に行きたい馬が外。スタートがうまい馬が内にいる。いい感じです」。各馬の特徴と並びを頭に入れて、シミュレーション。「前に行きたい。去年のクイーンズリング。あんな競馬ができれば」。盟友ルメールの手綱で、同じ２枠３番から２着に食い込んだ牝馬と姿を重ねた。

　自身は目下Ｇ１騎乗機会２連勝中。一時期は惜敗が続いていたが、明らかに好調モードへと突入している。「勝てないと苦しいからね。運も良くなかった。気にしていたから、勝ってさっぱりした。（モズカッチャンは）いつも頑張る牝馬。力を見せたい」。運を引き寄せ、勢いに乗ったこの男は誰にも止められない。