【競輪】原大智、頂点へ妥協なし 平昌モーグル銅メダリスト15日広島でデビュー
今回のKEIRIN屋は、15日の広島競輪「ルーキーシリーズ2020」で競輪選手デビューを果たす、2018年平昌五輪フリースタイルスキー・男子モーグル銅メダリストの原大智(23)=宮城・117期・A3=を特集する。3月に特別選抜入学試験で入所した日本競輪選手養成所を卒業。モーグルと競輪の“二刀流”に挑む原に、訓練生時代の苦労や今後の抱負などを聞いた。
五輪で銅メダルを獲得した原だが、特別選抜試験で合格した日本競輪選手養成所ではつらい日々を送った。自分で選んだ道でも「モーグルで経験したことのないほどのキツさでした」と、競輪選手としての練習はハードだったと振り返る。それだけではない。「自由がないですからね。縛られる生活もつらかったです」。分単位で行動する養成所での生活にも苦労したようだ。
東京都渋谷区生まれの都会っ子。モーグルは小学6年生から本格的に始めた。ワールドカップでの表彰台経験もなかったが、初めての五輪出場となった18年の平昌で見事に銅メダルを獲得。「これが初めての表彰台です」。人並み外れた勝負強さを見せて、フリースタイルスキーでは日本人男子初のメダリストとなった。
そんな原が日本競輪選手養成所ではもだえ苦しんだ。どんなに頑張ってもタイムが出ない。入所直後の19年5月に行われた第1回記録会では72人中、400メートルで最下位と低迷。9月に実施された第2回記録会では1000メートルで規定タイムをクリアできず、退所の危機に陥ったが、同月下旬に行われた追試で何とかクリアした。
「1回目の記録会はあり得ない成績で、かなり悔しい思いをしました。とにかくもっと力をつけないと…と考えましたね」。五輪メダリストとして注目される中、なかなかタイムを出せないことに苦悩していた。だが、追試で退所の危機を回避できたことで、ひと回り成長できた。今年2月に行われた実技の卒業認定考査にも合格。70人中、200メートルで55位、1000メートルで60位だったが、基準タイムをクリアできた。「肩の荷が下りましたね。最低限の力は備わってきたかなと思います」とホッとした表情を見せていた。
3月の卒業記念レースでは、さらに成長した姿を見せた。決勝進出はならなかったが、予選は2走とも4着。立ち遅れることなくレースを運び、直線では前団に迫る走りを披露した。「自力を出せなかったことに悔いが残ります。結果としては悪くないが、脚力のなさにふがいなさを感じました」と反省点を挙げるが、デビューに向けては手応えのある動きができた。
今後の目標は「やるからには一番上を目指します。そこに妥協はありません」とキッパリ。“二刀流”に関しては「北京(22年)で終わりにしようと思っています」と明かす。さらに「競輪がおろそかになってしまうようなら、モーグルを諦めます」と付け加えた。競輪、モーグルとも極めるために努力を惜しまない原。その成果を、まずは15日に広島で披露する。