疑問が残った“厳正な対応” 持続化給付金の不正受給疑惑
中央競馬の厩舎関係者が新型コロナウイルス対策の国の持続化給付金を不正に受給した疑惑について、JRAは6日、中山、阪神の両競馬場で会見を行い、内部調査の結果を発表。実名についてはプライバシー保護を理由に明かされなかったが、受給者は調教師19人、騎手13人を含む165人で、総額1億8983万9222円に上ることが分かった。
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JRAに対する農水大臣からの指示は次の通りだ。「競馬の信頼を確保するために、事実関係を把握して、不正受給があれば返還させるなど、厳正に対応を取るように」。調査結果から事実関係は把握し、ほぼ全員が返還、または返還手続き中だ。ただ“厳正な対応”には疑問が残る。
(1)持続化給付金の趣旨、目的を理解していなかった。
(2)税理士らの勧誘があった。
(3)社会的問題となるリスクへの認識がなかった。
今回の事案について、JRAは以上の3つを原因に挙げた。(2)については104件の申請に関わっていた大阪の男性税理士に対し、「馬主資格を有する税理士等がJRA施設内で自身の事業の営業的な行為を、間接的にしても行っていたのではあれば遺憾」としながらも、聞き取り調査すら行っていなかったことが判明。今後の早急な対応が求められる。
驚いたのは全体の約1割となる19人の調教師が受給していたことだ。日本調教師会による注意喚起以降、返還したのはわずか3人。これでは従業員に注意できるはずがない。
調教師、騎手の処分は各会の内規に基づいて検討されるというが、統括団体であるJRAが処分を決めずに、信頼確保に至るだろうか。調査結果を示し、再発防止を宣言しただけでは国民、競馬ファンは決して納得しないだろう。今回の会見で終わりではない。処分を含め、最終的な結論を待ちたい。(デイリースポーツ・井上達也)