たたき上げトーラスジェミニ送り出す多才な小桧山師
恐らく日本で最も異彩を放つ調教師だろう。「ゴリラの本は電子書籍にもなっていてね。今でも買ってくれる人がいるみたいだよ」。声の主は小桧山悟調教師(67)=美浦=だ。現役トレーナーでありながら、16年にゴリラの写真集「GORILLA My God 我が神、ゴリラ」を出版し、現在も競馬雑誌でコラムを毎週連載するなど活躍は多岐にわたる。
父親の都合で世界を渡り歩いた幼少期。高校の頃、アフリカの動物園で出会ったゴリラの赤ん坊に心を奪われたという。「動物が好きだったからね。帰国後は馬に乗りたくて、東京競馬場の近くで馬術部のある大学に通いました」。それから競馬の世界に入り、96年に開業した。
時がたち、厩舎スタッフから青木孝文、小手川準、堀内岳志の3人が調教師になった。現在も山田、原の2人の騎手を育て上げている。「俺は何もしていないよ。勝手に育っているだけ」と謙遜する指揮官だが、競馬界への貢献度は単純な勝利数などでは計れない。
現在の看板馬であるトーラスジェミニも、いわゆるエリートではない、たたき上げの競走馬だ。本格化した今なら、七夕賞に続き札幌記念でも再び快走があるかもしれない。(デイリースポーツ・刀根善郎)