【ヴィクトリアM】アンドヴァラナウト 母と兄の分も夢をかなえて
「ヴィクトリアマイル・G1」(15日、東京)
ダイナカール~エアグルーヴと流れる日本を代表する牝系は、アドマイヤグルーヴなどの活躍でさらに発展。種牡馬となったルーラーシップの登場でさらなる広がりを見せ、今や生産界にとって欠かせない存在となった。
今回、紹介するアンドヴァラナウトもこの一族の出身で、同馬は12年マーメイドSを優勝したグルヴェイグの4番子。この血筋は、言わばルーラーシップと同じ“角居系”であり、名伯楽の元で学んだ辻野泰之調教師にとって思い入れは深い。
母グルヴェイグはわずか11戦(5勝)で現役を引退。4歳で制した前記マーメイドSがラストランとなった。辻野師によると「脚元に弱いところがありましたが、無事に繁殖に上げなければならない血統馬なので、大事に育てていました。マーメイドSの頃には(間隔を)詰めて使えるようになっていましたが、その矢先に脚部不安を発症してしまって…。重賞を勝って箔もつきましたし、あのタイミングで繁殖入りすることになりました」と経緯を教えてくれた。
母の無念は子どもたちに託されたが、グルヴェイグの長男ヴァナヘイムもまた、わずか5戦で引退を余儀なくされた。「京都2歳S(2着)の後、骨片が剥がれたので休ませましたが、その後に同じところを2回骨折してしまって…。あの馬のポテンシャルは相当なものがあったと思います」と教えてくれた。
既に21年ローズSを制している妹には、母と兄が果たせなかった夢をかなえてほしい。「グルヴェイグの子で大きいところを勝つ馬が必ず出てくると信じています。アンドヴァラナウトはもちろん、子孫の活躍を陰ながら応援しているんです」と辻野師。同馬を管理する池添学師も、技術調教師時代に角居厩舎の門を叩いた。悲願のG1制覇で、名伯楽の結晶に箔を付けられるか。(デイリースポーツ・松浦孝司)