【菊花賞】アスクビクターモア 意地のレコードV 田辺執念の騎乗でラスト1冠奪取
「菊花賞・G1」(23日、阪神)
65年ぶりとなる皐月賞&ダービー連対馬が不在のラスト1冠。ゴール前の大接戦を制し、レコードVで悲願のG1初制覇を果たしたのは2番人気のアスクビクターモアだ。田辺裕信騎手(38)=美浦・フリー=はうれしいクラシック初制覇。次戦は未定ながらオーナーサイドは有馬記念(12月25日・中山)参戦を示唆しており、今後はタイトルを手に古馬との戦いへ突き進んでいく。なお、1番人気のガイアフォースは8着に敗れ、平地G1での1番人気連敗は“16”となった。
春のクラシック連対馬が不在の菊は、実に65年ぶり。戦前から飛び交った“混戦”の二文字。そんなムードを断ち切ったのは、ダービー3着馬の意地だった。夏の上がり馬の猛追を退け、関東期待のディープインパクト産駒アスクビクターモアが最後の1冠を力でもぎ取った。
勝負師・田辺の執念が実った。積極果敢に攻めた5月のダービーと同じように、自ら仕掛けて2番手へ。「馬の力が一枚も二枚も上だから、思い切って行け!」。戦前の田村師の後押しで腹を決め、前半5F58秒7の激流にも強気の姿勢を崩さなかった。
4角手前から早めにスパートをかけ、後続を一気に引き離す。だが、ライバルも黙ってはいない。最後の坂上で足音がグッと近づく。燃料は残りわずか。こん身の右ステッキ連打で鼓舞すると、外から迫ったボルドグフーシュと鼻面を並べてゴールへ飛び込んだ。
まさに乾坤一擲。鞍上が「分からなかった」と振り返る勝負の結末は、首の上げ下げで鼻差『14』に軍配。「目標とされる立場でしたが、馬の力を信じて自分から動かして行きました。さすがに最後は脚が上がり気味だったのでヒヤッとしましたね。よくしのいでくれました」。絶対に獲らなければいけないラスト1冠。勝利を確認すると、ホッと安どの表情を浮かべた。
強気に人馬を送り出した田村師も、初のクラシック制覇は格別だ。16年NHKマイルC(メジャーエンブレム)以来となるG1奪取に、「去年、未勝利を勝った時から“絶対クラシックに乗せられる”と信じていた。春もいいところまでは来ていたけど、最後はここが勝負と思っていた。獲れてうれしい」。菊の大輪を咲かせ、頬を緩ませた。
菊花賞馬として、今後は歴戦の古馬との戦いが待っている。同期のドウデュースやイクイノックス、ジオグリフとの再戦も。主戦は「まだ成長過程。毎回“前回よりも良くなっている”と感じるし、この先も楽しみ。僕もこの馬に負けないように考えて乗ったり、鍛えたり、一緒に成長していきたい」と意気込む。
本当の勝負はこれから-。人馬一体となってつかんだ自信を胸に、その名の通り“より多くの”タイトル獲りへと突き進む。