伸び悩み32歳でよぎった引退の2文字 福永祐一の意識を変えた工藤公康氏の金言とは
「フェブラリーS・G1」(19日、東京)
3月から調教師に転身する福永祐一騎手(46)=栗東・フリー=が、ついにJRA・G1ラスト騎乗を迎える。コンビを組むのは、21年平安SでともにレコードVを決めた7歳馬オーヴェルニュ。国内最後の大一番を目前に控えた名騎手の秘話をデイリースポーツの競馬担当記者が紹介する。
◇ ◇
今でこそ誰もが知るトップジョッキーとなった福永だが、伸び悩み、32歳の時には引退を考えたこともあったという。「(所属の)北橋厩舎、瀬戸口厩舎が解散して乗り数が減って。俺はこんなもんだしな、って感じで」。同じ2世騎手として輝く先輩・武豊に憧れて騎手を志したが、当時のユーイチにとって、その背中は想像以上に遠かった。
そんな時、交流のあったプロ野球のソフトバンク前監督・工藤公康氏とこんなやり取りがあった。「“誰にかわいがられているの?”と聞かれ、『豊さんにかわいがってもらっています』と答えたら、“かわいがってもらっているうちは超えられないね”と言われて」。このひと言で、意識が変わったそうだ。
「豊さんと一定の距離を取り、自分の足で別の道を歩いていかなきゃいけないんじゃないかと。口を利かないとかではなくて、プライベートで一緒に過ごすのはなくなった。一番になりたくてこの世界に入ったから」。その後の活躍はご存じの通り。34歳から年間100勝達成をJRA史上最長の13年連続で継続し、夢のリーディング騎手にも輝いた。
無論、レジェンドへの憧れと尊敬の念は今も変わらない。「小倉で“もう最後だな”って思う中で、豊さんが隣のゲートにいたり、直線で競り合ったり、本当に楽しかった。スーパースターやから」。競演のひとコマをかみしめる表情は、まるで新人騎手のようにうれしそうだった。(デイリースポーツ・井上達也)