躍動の2005年 日米樫Vシーザリオなど国内外でG1・6勝【福永祐一連載④】

シーザリオでオークスを制覇した福永=05年5月22日・東京競馬場
ラインクラフトで桜花賞を制し、ガッツポーズを決める福永祐一=05年4月10日・阪神競馬場
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 3月から調教師に転身する福永祐一騎手(46)=栗東・フリー。現役ラスト騎乗が刻一刻と迫るなか、時代を彩った名馬やレースとともに、希代のスター騎手となった彼のヒストリーを全8回の連載で振り返る。

  ◇  ◇

 2005年は躍動した1年だった。JRA年間勝利数は大台を突破して109勝とキャリアハイの数字を記録。その中身も非常に濃いものだった。重賞勝利数は02年に記録した8勝を大きく上回る16勝をマーク。そのうちG1はフェブラリーS(メイショウボーラー)、桜花賞(ラインクラフト)、NHKマイルC(ラインクラフト)、オークス(シーザリオ)、朝日杯FS(フサイチリシャール)に加え、海外でも米国のアメリカンオークスをシーザリオで制し、国内外で6勝を挙げた。まさに無双状態だった。

 まずはフェブラリーSをメイショウボーラーでV。この勝利はダート界の新たな幕開けを予感させるものだった。これまでのダート活躍馬はパワーを武器にして力でねじ伏せるタイプが多かったが、芝からダートに転向した同馬は、圧倒的なスピードを発揮して逃げ切りVを決めた。1分34秒7のV時計はレコード。レース後に「着差以上に強かった。すごい馬だと思う」と評価している。新時代のダート馬と上り詰めた頂点だった。

 この年は2頭の天才少女との巡り合わせもあった。ラインクラフトとシーザリオだ。ともにデビューからコンビを組み、素質を認めていた逸材。この2頭が桜花賞で対戦することになった。

 福永は早くから桜花賞参戦が決まっていたラインクラフトに騎乗し、17番枠の不利をはねのけて、積極的に好位置を取りに行く正攻法の競馬で勝利に導いた。「思ったより前になったが、無理して取った位置でもなかった。強い馬でしか勝てない勝ち方。強気のレースに応えてくれた馬に感謝したい」と語っている。ラインクラフトは次戦のNHKマイルCも牡馬を蹴散らし、変則2冠を達成。この当時は牡馬の方が強いという概念があったが、それを覆すような完勝劇だった。

 ラインクラフトがNHKマイルCに出走したことにより、オークスはシーザリオと再コンビを結成することになった。桜花賞馬が不在とあって単勝は1・5倍。後方からメンバー最速の上がり3F33秒3の末脚を繰り出してG1制覇を達成したが、自身の騎乗に関しては満足できるものではなかった。レース後、管理する角居師にかけた第一声は「ごめんなさい」。

 前半5Fの通過が63秒1とスローペースになり、馬群が密集して勝負どころで動けない状況に陥った。4角でも12番手と後方の位置取り。最後に差し切ったものの、厳しい競馬だった。「馬に勝たせてもらった。いい仕事をしたとは言えない」と反省の弁を述べている。

 シーザリオはこの後、米国遠征に向かう。レースはアメリカンオークス。そこで圧倒的なパフォーマンスを見せた。海外の強力なライバルを蹴散らし、レースレコードを記録する4馬身差の圧勝。日本調教馬による米G1初制覇の快挙となった。「(日本の)G1では不完全燃焼が続いていたから。力を出し切れば、こういうの(圧勝)もある、と思っていました」。真価を見せつけたい一心で手綱を握り、最上の結果をものにした。

 シーザリオは引退後、3頭のG1ウイナーを輩出。その1頭、エピファネイアとの物語は7年後からスタートする。

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