【競輪】“平成の鬼脚”成田の復活願う
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今年の後半は“平成の鬼脚”成田和也のことばかり考えていた。どうして、こんな目に遭わなければいけないのか。8月のG3・豊橋記念。準決の落車で、成田は右鎖骨を折ってしまった。
記者の余計なひと言が、原因のひとつだと落ち込んでいる。レース前に「後方に置かれても、最後まであきらめず、伸びるコースを探して突っ込んでください」と、偉そうにトップレーサーの肩をトンと叩いて伝えた。レースでは最終バック9番手。最終4角を回ると、中割りを狙ったのか、車群へ強引に突っ込み、事故が起こった。
一流の男で、一流の風格があるマーク屋。そんな成田は誰に対しても親切に受け答えをする紳士だ。記者のささやきにも、嫌な顔をせずに耳を傾けてくれた。もちろん、今は言い過ぎてしまったと大きく反省している。
あれから、約4カ月間の長期欠場。12月のG3・広島記念で復帰したが、骨折の手術に失敗があったとも耳にしていたので、心配だった。初日特選、2日目優秀と順調に勝ち上がったが、準決で不安は的中。またも落車して、同じ右鎖骨が折れてしまった。
こうして、記者が成田について原稿を書きたいと思うことさえ、悪影響したのではないのかと胸が痛む。今の成田は「天はわれを見放したのか」と叫びたい気持ちだろう。成田和也よ、一日も早く、体と鬼の心を取り戻して、バンクに帰ってくることを願う。(関東競輪担当・吉野みどり)