【オート】追悼、片平巧

片平巧さんのの献花台
3枚

 「オートレース記者コラム・仕事 賭け事 独り言」

 オートレース界の至宝・片平巧(享年49)が20日に急死した。死因は公表されず、葬儀は親族のみで行われた。カリスマレーサーの突然死。持病が悪化したようだが、早すぎる死を悼む。船橋オートレース場内のWITH(ウィズ)に設置された記帳台、献花台には多くのファンが足を運び、別れを惜しんでいる。

 私がオートレース担当になったのは2012年3月。片平はすでにピークを過ぎていたが、それでもバリバリのS級。セアの申し子と呼ばれた1990年代の超人的な強さを知っていただけに、船橋のロッカーで初めて取材したときは胸が高鳴ったものだ。

 クールで孤高を貫くタイプだったが、質問にはきちんと答えてくれた。ただ、予選や準決勝で敗れて、優出権利を失った後は「負けた選手に聞いても仕方ないでしょう?」と苦笑いされることもあった。そういう繊細な心の持ち主だった。

 最後に話を聞いたのは今月9日、船橋オートで行われた黒潮杯の初日4Rで4着に敗れた後。「1カ月半ぶりのレースだったから、レース勘が戻っていない。エンジンも気になるところがあるので、そこを修正してみる」と、いつもと違う様子はなかった。

 2日目10Rは後方のまま6着に敗れた。レース後は上位入着選手のコメントを聞き、片平のところへは行かなかった。12Rの取材終了後に記者室へ戻り、しばらくしてから発表された翌日の出走表には片平の名前がなく、3日目から身体不良で欠場となっていた。

 その時点では10日後に亡くなるとは思いもしなかった。オートレースの一時代を築いた天才レーサー。レースに出場中は、夕方練習後に暗くなりかけた競走路で、欠かさずジョギングをしていたが、その姿を見ることはもうない。業界は大きな宝を失った。(オートレース担当・平石一孝)

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