【ボート】徳増秀樹は「ボート界のヒデキ」多彩な技で頂点を目指す
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新年度1節目となった4月の児島ボート「第35回倉敷市長杯」は、2コースの徳増秀樹(44)=静岡・75期・A1=がズバッと差して優勝。敬礼しながら通算84回目のVゴールを駆け抜けた。
カメラを持ち、表彰式が行われるステージに移動し始めると、頭の中にメロディーが流れ始めた。昭和の大スター・西城秀樹さんのヤングマンだ。徳増が西城さんの歌の中で一番好きだと言っていた楽曲である。
端正な顔立ちと理論的な受け答え。レース場での徳増は常にクールだ。そんな徳増が、レース以外のことを熱く語ったことがある。それは昨年6月、徳山で開催されたSG・グランドチャンピオンでのこと。徳増を囲む記者の中から、同じ名前である西城秀樹さんの話が出た。えっ、この場で、この質問?と耳を疑った。鋭い眼光でにらまれると思ったが、逆だった。
徳増はいつもとは違う表情で西城さんについて熱く語った。「僕の父親がファンで、秀樹という名前をつけられた。あの歌唱力は素晴らしい」と天国へ旅立ったスターへの思いを、一人のファンとして語った。一番好きな曲はと問われ「やっぱり、ヤングマンでしょ。誰もが元気になれる」と穏やかな笑顔で答えた。
今回の児島は予選2位だったが、多彩なレースで徳増らしさを随所に見せつけた。5日目、強風の中で決めたカドまくりはうりゃ~という感じで、私にはローラ!!に聞こえた。強風の準優もしっかりと逃げた。こちらはブルースカイブルーのような難しい曲をサラリと歌い上げた感じ。そして優勝戦はポップな差し。「自分でも気持ちいい差し。自信を持ってスタートも行けた」と直前の風向きの変化に対応。徳増が目指す質のいいスタートと精度の高いターンで勝利を収めた。
優勝戦後はお客さんも帰りを急ぐため、表彰式に集まったファンの人数は多くなかった。だが、徳増は残ってくれた一人一人に神対応。ステージを降りてサインや握手をしていた。そして、カメラを向けると自らポーズ。トロフィーを持つ右腕を天に突き上げ、左手を腰に当てて満面の笑顔。こんな表情は見たことがない。おお、これはヤングマンの締めポーズ。頭の中で曲が鳴り響いていた私にはラストのジャンが聞こえた。
ロックもポップスもバラードも歌い上げた西城秀樹さんのように、ボート界のヒデキも何でもできる。ロックなまくりも、アップテンポな差しも、バラードもお手の物。令和の時代はビッグタイトルを勝ち取り、勝利の雄たけびを聞かせて欲しい。(児島ボート担当・野白由貴子)