【地方競馬】地方競馬での無観客開催はいつまで続くのか
「レース記者コラム 仕事・賭け事・独り言」
プロ野球が約3カ月遅れで開幕した。さっそくビール片手(笑)にテレビ観戦の日々が始まったが、何か違和感を禁じ得ない。
いつもは四六時中鳴ってる応援のラッパや太鼓に「うるさいなあ。もっと緊張感を持って野球が見たいのに」と辟易していたのに、スタンドのざわめき一つ聞こえない中継がしっくりこないのだ。
振り返って、自分の職場である競馬場の無観客による静寂には、もう慣れっこになってしまっている日常に改めて気付かされた。
あれはもう約4カ月も前。大井競馬で重賞フジノウェーブ記念をトロヴァオが勝った2月26日の水曜日、唐突に記者席へ施行者からのリリースが回ってきた。
「新型コロナウイルスの感染予防および拡散防止のため、第18回大井競馬4日目(2月27日)、5日目(2月28日)の2日間の開催について、無観客競馬の実施を決定いたしました」
ちなみに昼間競馬で行われていたこの日の入場人員は3052人。それが翌日からスタンドにファンの姿はなくなり、JRAも27日に、2月29日(土)の中山、阪神、中京からの無観客競馬を発表。当初は「当面の間」とされていたが、何度かの延長があって、現在に至っている。
それにしてもネットの力はどうだ。特に地方競馬の売り上げは落ちるどころか、重賞のほとんどがレコード更新。先週の帝王賞は、2万9584人が競馬場へ詰めかけた前年を4億円以上も上回っての新記録だった。
地方競馬全国協会(NAR)のホームページによると、今年4~5月の売り上げは、南関東が昨年より開催日2日減にもかかわらず107・2%で、地方全体では123・9%。一部の関係者からは「もうこのままでもいいんじゃないか」なんて声も聞こえてくる。
もちろん無観客競馬が正常であるはずもなく、帝王賞ウィークの大井競馬場では来たるべき日に備えて、馬券発券機には1台おきに使用停止の表示ボードが置かれ、その前にはスーパーのレジなどで実施されているような距離を置いて並ぶ位置指定のマークが貼られていた。
政府は今後も自粛要請を段階的に緩和し、7月10日にはプロスポーツを含めイベントの入場制限を「5000人まで、または収容人数の50%以内」とし、その後は人数制限の撤廃も想定している。
とはいえ、ファンが滞留しやすい競馬場や場外発売所の事情は、野球やサッカーのスタンドや大相撲の国技館などとは大きく異なる。
一部では、指定席を含めたネットによる予約入場で来場者数を絞る案や、場内では馬券を発売せず競馬観戦のみ(各自がネットで購入)とする案などが持ち上がっていると聞くが、はたしてどんな出口戦略が採られるのか。
いずれにしても、個人的には一日でも早く“紙の馬券”で競馬を楽しみたい。もちろん筆者もSPAT4やJRAネット投票で口座に残高がある限りスマホで馬券は買えるのだが、銀行での通帳記入や、JRAネットの「投票照会サービス」で過去を振り返る際のむなしさたるや…。
競馬を始めたウン十年前に熟読した寺山修司は、馬券について「何でトータルする必要があるんだ。あんたの人生はトータルして笑ってるか泣いてるか」と力説していた。激しく同意したい。
(地方競馬担当・関口秀之)