【ボート】水上の仕事人は仕掛けて仕損じなし 来年も名勝負に期待だ

 「レース記者コラム 仕事・賭け事・独り言」

 19日に閉幕したボート界の頂上決戦、SG・グランプリ(住之江)は瓜生正義(45)=福岡・76期・A1=が豪快なまくりを決めて優勝を成し遂げた。一方、1号艇で断然の人気を集めていた峰竜太(佐賀)が1周1マークでターンマークに激突して妨害失格。その影響で後続の3艇も巻き込まれて転覆となり、完走は瓜生と白井英治(山口)のみ。レースは3連単、3連複が不成立となる大波乱で幕を閉じた。

 グランプリの優勝戦は全国約1600人のボートレーサーが目標とする最高峰の舞台。ファンとしては残念な結末だが、意地とプライドを懸けた極限のバトルだけに、勝負の世界では何が起こっても不思議ではない。だが、そこで値千金のターンを仕掛けた瓜生の技量は敗れた峰が潔く敗北を認めた超一流の戦術。最終決戦にふさわしい最高の評価を与えてもいいだろう。

 瓜生は2016年に初のグランプリ覇者となり、今回が2回目。当時は40歳で、それ以降30代の選手がタイトルを独占していたが、今回は45歳の瓜生が久々にタイトルを奪還した。ボート界では45歳以上が「マスターズ世代」と区分けされるが、瓜生の偉業はボート界に限らず、同世代の者たちに確かな刺激となったはずだ。

 今年のグランプリには、45歳の瓜生、白井をはじめ、46歳の原田幸哉(長崎)や辻栄蔵(広島)、48歳の浜野谷憲吾(東京)、49歳の前本泰和(広島)が参戦。瓜生以外は優勝に一歩及ばなかったが、トライアルのステージではダイナミックなターンで挑んでくる若武者に対し、幾多の修羅場で培われてきた巧腕テクニックを随所で発揮。最終周回まで見どころたっぷりのレースを繰り広げ、スタンドのファンを大いに沸かせた。

 ボート界では圧巻の存在感を示した巧の世代だが、他のスポーツの世界でも、手腕や経験値を増した「円熟期」の手腕は重宝される時代になってきている。サッカーでは54歳の三浦知良が現役でプレーを続行。プロ野球でも、イチローは45歳まで大リーグで活躍。山本昌は50歳まで若手顔負けの技巧スタイルで投げ続けた。

 ひと昔に比べて、一般社会でも40~50歳のイメージは大きく変化しているように思う。かつては「おじさん」と冷たくあしらわれる世代だったが、ネットの普及もあり、ライフスタイルは若々しく進化。物流の劇的な改善など生活に負担が少なくなり、快適な日常を暮らせることで老化のスピードも減少。平均寿命も着実に延ばしてきた。

 スポーツの施設も科学的な理論を取り入れた器具が続々と開発。精神的な根性論より、体幹を重視した効率的なトレーニング方法も続々と生み出されてきている。それらの進化は、選手寿命を延ばす要素に間違いなく役に立っていると思う。

 これまでのSGグランプリで最高齢の覇者は、1993年に49歳で優勝した野中和夫(引退)。瓜生をはじめ、マスターズ世代にはその記録を打ち破るまで活躍を続けてほしいところだが、来年は峰をはじめ、リベンジに燃える選手との戦いや、平成生まれで初のファイナリストとなった丸野一樹(滋賀)、次世代の若武者の躍進など、さらなる強敵との勝負が待っている。仕掛けて仕損じなし-。百戦錬磨の仕事人たちが繰り広げる激闘は、新たな名勝負をつくり出していくだろう。(関西ボート担当・保田叔久)

関連ニュース

編集者のオススメ記事

レース記者コラム最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(レース)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス