【競輪】野原哲也さん一流選手の育成法
トップクラスの競輪選手として活躍していた野原哲也さん(53)=福井・51期=は昨年10月に引退。現役時代から他の選手を鍛え上げていて、G1・寛仁親王牌を制した市田佳寿浩(38)=福井・76期・S1、北川紋部(39)=福井・78期・S1=らを弟子として育て上げた。練習仲間として脇本雄太(24)=福井・94期・S1=も指導。引退後も競輪に対する思いは熱く、最近は長男の野原雅也(19)=福井・103期・A2=やプロを目指すアマチュア選手4人らを指導。一流に育て上げる練習方法などを探ってみた。
野原さんの練習に合流したのは午前10時。そのときに参加していたのは、長男で7月にデビューした野原雅也と来年度の競輪学校合格を目指すアマチュア選手の2人。これから練習開始と思いきや、早朝5時からの70~80キロを乗る街道練習を済ませたあとだった。そんな疲れは全く見せず、野原さんのバイク誘導で片道およそ40キロの乗り込みが始まった。
九頭竜川沿いの道路を走り、恐竜博物館までの四方を山に囲まれるロケーションのいいコース。だが、距離半ばからは徐々に上り坂がキツくなっていく過酷な道路である。野原さんのバイクの直後に雅也は続き、その後ろにアマチュア2人。最初は順調だったが、上り坂が始まったあたりでアマチュア2人は脱落、親子2人で目的地に到着となった。アマチュア2人が遅れながらも何とか合流。しばしの休憩のあと、今度は自宅へ向けて練習再開。ゴールしたときには、さすがの雅也もヘトヘトだった。
雅也の姿を見て野原さんは「2本くらいでバテるようじゃまだまだ」と厳しい表情。野原さんの現役時代は、早朝そして午前中の分だけで終了するのでなく、午後からも乗り込み、夕方から筋力トレーニング。それを市田ら弟子にも課していたのが強くなる源のように思えた。「上を求めるならこれくらいはやらないと…」と息子に求めるものは高い。
「自分の練習ポリシーは変わっていないし、一流になるには必要なこと」と現役から練習へ取り組む基本姿勢は変わっていない。それでも指導方法には少し変化が表れてきた。
アマチュア選手などをきちんと教えるには「自分の感覚だけではダメ」と、日本体育協会の公認コーチの資格を取るために講習を受講中。そこで「間違っていないと思える練習でも、頭ごなしにやらせては意味がない。どういう効果があるから必要だと納得させないと身につかない」ということを痛感した。
「教えることは楽しい」と顔をほころばせる野原さん。真の指導力を身につけ、一流競輪選手をこれからも輩出していく野原さんの努力はまだまだ続く。