2007/11/18 京都競馬場
▼第24回マイルCS | |||
1着 | ダイワメジャー | 安藤勝 | 1.32.7 |
2着 | スーパーホーネット | 藤岡佑 | 首 |
3着 | スズカフェニックス | 武 豊 | 1/2 |
貫録のレース連覇、そしてマイルGI3連覇だ。1番人気に推された昨年覇者ダイワメジャーが、好位から押し切る横綱相撲でV。異父妹ダイワスカーレットのエリザベス女王杯に続き、2週連続での安藤勝&ダイワ勢のGI勝利となった。首差2着に4番人気スーパーホーネット、さらに半馬身差で5番人気スズカフェニックス。ゴール入線後に下馬した4着アグネスアークは、その後、左前肢の繋靱帯(けいじんたい)炎が判明した。
スーパーホーネット(右)の追撃を振り切り、マイルCSを制したダイワメジャー=京都競馬場
この舞台だけは譲れない。ダイワメジャーがマイルGI3連覇で通算GI勝ち星を“5”に伸ばした。
好スタートから、序盤は内のローエングリン、フサイチリシャールとの主導権争いに。外に馬体を合わせたまま、ジッと様子をうかがうと、たまらずローエンが行き、リシャールが2番手。「前走が大事に乗りすぎたところもあったからね。負けてもいいから強引に。馬に行く気にさせてから突っ走ろうと思っていた」。アンカツがイメージしていた通りの流れができあがった。
強気を貫いた。直線、早めに先頭へ。外から猛然と勢いのあるスーパーホーネットが襲いかかってきた。「すごい脚で来ているのはわかった。勢いで負けるかと思ったけど、並んでからまた差し返してくれたからね。ホントによく頑張ってくれた」。最後は首差まで迫られたが、1分32秒7の勝ちタイム、そして着差も昨年と同じ首差。並ばれても抜かさせない、メジャーの勝ちパターンに持ち込む完ぺきな内容で、不動のマイル王の座を守った。
上原師も感無量の表情だ。天皇賞で受けた直線での不利。そのダメージを心配し、レースへ向けては出否を含め、思い悩む日々があった。「どうしても慎重にならざるを得なかったけど、うまく調整ができたし、最終追い切りの動きからもやれると思った。ジョッキーには“心配しないで、一生懸命頑張ってください”とだけ話したんです」。秋2戦の敗戦で周囲からは衰えもささやかれていた。しかし、ノドの疾患に悩み、大手術を施したほどの愛馬はたくましかった。「ホントに力のある馬。力で厩舎に貢献してくれた。区切りというか、どうしてもGI5勝目は欲しかった」。感慨深そうに、ほほ笑んだ。
恐るべき兄妹だ。先週のエリザベス女王杯を異父妹のダイワスカーレットが制し、これに兄が続いた。2週連続のGI制覇。母スカーレットブーケは、ナリタブライアン、ビワハヤヒデを輩出したパシフィカスに並ぶ、史上最多タイのGI8勝とした。2頭の主戦を務めるベテランは今年のGI6勝目。武豊の持つ年間最多勝記録(05、06年)に並んだ。残るGIは5戦。更新も視界に入る。「とにかくうまく競馬ができればいい。記録は狙っていない。きょうはメジャーが、まだ終わってないことを見せられたことがうれしい」。アンカツらしく静かに締めくくった。
気になる今後について「状態を見ながら、オーナーと相談して」と師は明言を避けたが、暮れの大一番・有馬記念での兄妹対決が現実味を帯びてきた。
マイルCS連覇を飾り、ダイワメジャーの背でガッツポーズの安藤勝
【大城オーナー「夢のよう」】
桜花賞、秋華賞、エリザベス女王杯のダイワスカーレットに、メジャーで安田記念、マイルCS。今年GI5勝目となった大城敬三オーナーは「最高の気分だよ。夢を見ているようで、馬主冥利(みょうり)に尽きますね。ホントに頭が下がります」。兄妹の頑張りに夢心地だ。「これで有終の美を飾ることができました」とドキッとする発言も。メジャーは今年いっぱいでの引退が決まっているが、「使うとすれば、有馬記念になるでしょう。これから考えます」とラスト一戦へも前向きだった。
【来春にディープ産駒誕生も】
社台ファームは先週のダイワスカーレットに続いて2週連続、今秋だけでGI5勝の固め勝ち。年間でも8勝(最多は05年ノーザンファームの9勝)とした。吉田照哉代表は「安藤さんがうまく考えて乗ってくれたね。オーナーも今年いっぱいで(繁殖に)上げようと話している。ファンのためには有馬記念で最後になるのかな。そのあたりはゆっくり相談したい。ブルードメア・オブ・ザ・イヤー、最優秀繁殖牝馬の賞があったらあげたいね」と満面の笑み。牧場にはネオユニヴァースの当歳がおり、今年はディープインパクトの子を宿している“偉大な母”スカーレットブーケ。ますます夢は広がっていく。
【藤岡佑悔し〜戴冠またお預け】
必死に右ムチを振るった。栄光のゴールはすぐそこ。だが、スーパーホーネットの前には、ダイワメジャーの姿があった。激しい追い比べ。先に抜け出した王者に迫りはしたが、届かない。わずか首差。05年朝日杯FSと同じ差で、またもGI初制覇は夢と散った。
「必死だった。めっちゃ不細工な追い方だった。これが経験の差なのかな」。藤岡佑は悔しさを自分にぶつけた。GI初Vを目指した21歳の若武者に、47歳の安藤勝が立ちはだかる。直線では、したたかに馬体を合わせてきた。「寄せにきていた。あれが真骨頂ですね」と肩を落とす。メジャーは併せ馬の形になると、しぶとさを発揮する。それが分かっていただけに、「ボクも勝ちパターンだけど、向こうも勝ちパターン。違う競馬もあったのでは」と無念を吐き出した。
状態は最高だった。「パドックも返し馬も最高。ジョッキーも最高にいい競馬をしてくれた。勝った馬が強かった。相手をほめるしかない」。矢作師はすがすがしいほどの表情で人馬をねぎらう。念願の美酒はお預けとなったが、また挑戦すればいい。次走は阪神C(12月16日・阪神)を予定。「次へ向けて、もうひとつ戦いのギアを上げていく」と雪辱を誓った。
直線で差を詰めて、接戦の3着に突っ込んだスズカフェニックス。18度目のマイルCS参戦となった武豊だが、今年も勝利に手が届かなかった。「惜しかったですね。折り合いがついて、非常にいい感じでした。ただ、バテた馬をかわすのに、外を回る形になりましたからね」とユタカは振り返る。秋初戦のスプリンターズSでは9着に終わったが、確かな上昇カーブを刻んでの銅メダル。「復調していますね」とGI馬の地力を再認識していた。
秋の天皇賞2着馬アグネスアークは中団待機から猛追したが、4着に敗退。念願のGIVは夢に終わった。「スタートは良かったけど、スッと行けなかった。最後は脚を使っているんだけどね」と、コンビを組んだ藤田。ゴール前でスーパーホーネット、スズカフェニックスの間に入る厳しい戦い。ゴール入線後に、藤田が下馬するシーンがあった。レース後に、左前肢の繋靱帯(けいじんたい)炎が判明。経過を観察することになった。
末脚不発。悲願の初戴冠を目指したカンパニーは、5着に終わった。「全然進まんかった。久々の右回りに戸惑ったとしか思えない」と福永は首をかしげる。道中は後方を追走。直線で内を突き、メンバー最速の上がり33秒7を駆使したが、美酒には届かなかった。「返し馬も良かったから期待していた。具合が良かっただけに残念」。道中の行きっぷりの悪さが最後に響いた。今後は放牧に出て、充電を図る予定。復帰は来春を見据えている。
ダイワメジャー…牡6歳。父サンデーサイレンス、母スカーレットブーケ(母の父ノーザンテースト)。馬主・大城敬三氏。生産者・千歳 社台ファーム。戦歴・27戦9勝(うち海外1戦0勝)。総収得賞金1、016、300、900円(うち海外59、580、900円)。重賞・04年皐月賞、05年ダービー卿CT、06年マイラーズC、毎日王冠、天皇賞・秋、マイルCS、07年安田記念に続き8勝目。安藤勝己騎手、上原博之調教師ともに06年に続き2勝目。