ケイバ熱盛ブログ「師匠・北橋さんの愛情」(3月9日)
サウジアラビアに出張していた、ということもあって久しぶりの登場。栗東・井上です。今回も“福永こぼれ話”をお届けします。
サウジで迎えた騎手ラストレース。直後の取材では目を潤ませ、声を詰まらせる場面もありましたが、「まだ引退式があるので」と涙をこらえていたのが印象的でした。3月4日に阪神競馬場で行われた騎手・福永祐一の引退式(YouTubeのJRA公式チャンネルでも視聴できるので、ご覧いただければ)。後輩・川田Jの言葉に、そして両親を前にして、涙が止まらなかったユーイチJでした。
引退式が行われたパドックは人、人、人…。1万1500人のファンが詰めかけ、「あんなに多くの人が残ってくれるなんて、びっくりした」と本人。これまでも、有名人の予想やレース回顧イベント、アーティストのコンサートなどが行われたパドックですが、私もあんなに多くのファンが集まったのは見たことがありません。さらに、「メモリアルブックもすごい立派で。映画のパンフレットみたいな。JRAが作り込んでくれたなぁ」と感謝しきりです。
そして、花束贈呈をされた元調教師・北橋修二さんの若いこと。定年引退された17年前と変わらない姿に驚かされました。「87歳やからね。ホントに元気。あの場に(2017年に亡くなった)瀬戸口先生もいらっしゃったらなぁ…って思ったよ。この間も墓参りには行ってきたけど。二人がそろっていたら、と…思う」と福永調教師です。師匠の北橋さん、そしてその盟友・瀬戸口さん。このお二人が福永祐一の騎手人生を支えてきたと言っていいでしょう。
北橋元調教師とはどんな師弟関係を築いていたのか。02年12月15日に香港シャティン競馬場で行われた香港カップ。エイシンプレストンで香港G1・3勝目を狙った福永Jでしたが、直線で斜行して2頭の進路を妨害。騎乗停止の処分を受けました。悔しい、そして関係者に申し訳ない…。そんな思いで引き揚げてくると、北橋師が出迎えました。「先生に“オマエ、デットーリを邪魔したんか!”って言われて。はい、すみません、って。そしたら“デットーリを邪魔するなんて大したもんやなぁ”って褒められた(笑)。スムーズだったら絶対に勝ってたけどね。囲まれたから」。もちろん、北橋師も勝っていたと思っただろう。弟子に悔しさをぶつけることなく、気持ちを抑えるのは容易ではないはずだ。弟子への愛情、師の器の大きさ、そして人柄を感じるエピソード。まな弟子が育った理由がよく分かる。