藤浪を陰で支えたもう一人のシンタロウ

 「高校野球・決勝、大阪桐蔭3‐0光星学院」(23日、甲子園)

 決勝前日に藤浪晋太郎投手と話し込んだ20分間。「一緒にできるのも最後やな」。大阪桐蔭・倭慎太郎(やまと・しんたろう)記録員(17)の心を支配した切なさは、春夏連覇で何物にも替え難い喜びに変わった。

 どうしても、大阪桐蔭に入りたかった。小学校の卒業文集に書いたのは「大阪桐蔭で甲子園に行く」という作文。背中を押したのは藤浪の存在だった。ボーイズでバッテリーを組んだ仲。「また組みたい」。迷わず門をたたいた。

 だが、1年の7月。古傷の右肘を再び痛めた。復帰後も思うように投げられない。昨秋、西谷監督から記録員への転身を打診された。「選手としてやりたい」。悩む倭に監督は言った。「19番目の選手として、頑張ってくれないか」‐。

 それからは、陰で必死の努力を重ねた。寮の自室に戻ると、ルールブック、これまでの試合が記されたスコアブックを穴があくほど読み返す日々。ノートを作り、監督に言われたことはすべて書き留めた。「藤浪と優勝したい」。その思いが支えになった。

 センバツから、藤浪と2人だけで対戦相手のビデオを見る研究は欠かしたことがない。試合中もベンチで常に球数や、気づいた相手の癖を伝え続けてきた。日本一の剛腕を支えた、もう1人のシンタロウ。「誰よりも努力してきたあいつが春も夏も優勝投手になって、本当にうれしい」。首から提げるメダルはない。だが試合後に抱き合った2人の心には、19個目がまぶしい輝きを放っているはずだ。

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