桐光松井ヒヤリ…バテバテ9K初戦突破
「高校野球神奈川大会・2回戦、桐光学園4‐2相洋」(14日、保土ヶ谷)
昨夏甲子園8強の桐光学園が相洋を4‐2で下し、3回戦に進出した。今秋ドラフトの目玉、松井裕樹投手(3年)は7安打2失点、9奪三振で完投。初戦独特の緊張感と猛暑に苦しみながらも、目標に掲げる全国制覇へスタートを切った。17日に予定される次戦は、上矢部と対戦する。
最強左腕にとっても、夏の初戦はやはり特別だった。2点リードの九回2死満塁のピンチ。こん身の直球で9番・栗田を一邪飛に打ち取ると、松井は両手を広げて天を仰いだ。笑顔を見せつつ「あぶねー」。本音が思わず口からこぼれた。
気合が空回りした。「待ちに待った夏の大会。勝ちたい気持ちが強すぎた。調子はよくなかった」。2点リードの五回には同点2点適時打を許した。この日最速は144キロ。直球は本来のキレを欠き、六回以降はスライダーなど変化球中心の配球に切り替えた。
だが、猛暑が体力を容赦なく奪う。七回2死から四球を出すと、ヒザに手を当てて大きく息をついた。マウンドの円陣で足を取られる場面も。代名詞の三振は9個だった。
戻ってきた友のためにも負けられない最後の夏だ。チームメートの小国颯外野手は、2年前の6月から白血病と闘ってきた。今年2月に部活動に復帰し、練習の補助を務めるまでに回復。本来は松井と同級生だが、闘病生活で現在は2年に籍を置く。
昨夏の甲子園は入院中だった友を「今度こそ甲子園に連れて行く」とナインは誓い合っている。「体のことをよく気遣ってくれます」と小国。一緒に戦う最後の夏。松井からは「しっかり応援してくれ。オレを見とけよ」と決意を示されている。
七回、4番・山田、5番・松井の連続押し出し死球で試合は決した。苦戦を制した松井は「暑さ、初戦の緊張感があったけど、仲間が声をかけてくれた」と感謝した。三回には1年生捕手の田中が、マウンドで先輩エースのあごをつまんで「リラックスしていこう」と声をかける場面もあった。「この苦しい初戦があったから、と言えるようにしたい」。頼れる仲間とともに“ドクターK”が全国制覇への一歩を踏み出した。