鳴門無念…“イケメンエース”涙の終戦
「全国高校野球・準々決勝、花巻東5‐4鳴門」(19日、甲子園)
準々決勝4試合が行われ、鳴門は4‐5で花巻東に敗れ、準優勝した1950年以来、63年ぶりの4強入りはならなかった。エース・板東湧梧投手(3年)は粘りの投球を見せたが、不運な同点適時打もあり力尽きた。日大山形は4‐3で明徳義塾を破り、延岡学園は5‐4で富山第一に延長十一回サヨナラ勝ち。宮崎県勢48年ぶりとなる準決勝進出を決めた。20日の休養日を挟み、大会第13日の準決勝は日大山形‐前橋育英、花巻東‐延岡学園で行われる。
こらえていた涙が一気にあふれ出た。いつもクールなイケメン右腕が、肩を震わせ泣いた。「エースとして踏ん張れなかった。力不足です」。あと一歩で届かなかった63年ぶり4強の夢。鳴門のエース・板東は悔しさを抑え切れなかった。
不運としか言いようがない。1点リードの八回2死二塁。相手5番・多々野の放った一塁前への平凡なゴロが、一塁ベースに当たって同点適時打に。「打ち取った当たりだった。ショックはあった」。平常心を取り戻せないまま、続く6、7番打者にも連続タイムリーを浴び3点を失った。
中1日のマウンド。疲労は蓄積していたが、自慢のカットボールなど変化球を丁寧に投げ分けた。だが警戒していた相手2番・千葉に5打席すべて出塁を許した。六、八回の失点は、ともに先頭・千葉への四球がきっかけだった。九回、“うず潮打線”の反撃は1点止まり。逆転の願いは届かなかった。
涙が止まり、いつもの淡々とした口調に戻ったエースは「母に、今までありがとうと言いたい」と少し笑った。
徳島大会の直前、女手一つで育ててくれた母・美佐子さんに誘われ、2人で自宅近くの神社に行った。甲子園出場を祈り、お守りを買った。それを遠征用バッグにつけて聖地に持参。アルプスで見守った母へ感謝の思いを込めた4試合、565球の熱投だった。
徳島大会を含めると計8試合、1120球を1人で投げ抜いた。昨春センバツから4季連続で出場した甲子園。全力を出し切った最後の夏。「ここは実力以上のものを引き出してくれた場所。気持ちのいい場所だった」。聖地を去る頃には、イケメン右腕にさわやかな笑みが広がっていた。