豊川・武市、父に伝えた甲子園の魅力
「選抜高校野球・準決勝、履正社12-7豊川」(1日、甲子園)
アルプスの父に甲子園の魅力を伝えられたはずだ。手に汗握る攻防、大歓声に揺れるマンモス…。敗れはしたが、豊川(愛知)の武市啓志外野手は「粘りの試合ができたと思う」と胸を張った。
父のエパ・アクミル・ワンドさん(42)はインドネシア出身。武市もバリ島生まれだが、父と日本人の母・みささん(42)に連れられ1歳から日本で育った。
野球を始めたのは小学3年のとき。ただ、インドネシアは野球に縁遠いお国柄。サッカーとバドミントンが大好きな父は、ホームランを打ってもファインプレーをしても反応がイマイチ。それは今年、センバツ初出場が決まっても同じだった。
「甲子園決まったよと伝えても『へ~、よかったね』くらいの反応でした」
茨城で自動車部品関連の仕事に就く父はこの日の朝、夜勤明けながら新幹線で応援に駆けつけてくれた。2‐6から1点差に追いついた八回2死二、三塁。武市は気迫のこもったスイングで逆転の中前打を放った。しかし九回に追いつかれ、最後は延長で敗れた。
メガホンを両手に声援を送った父は「仕方ないよ。頑張ったから」と息子をたたえ、「聞いていた通り、甲子園はスゴいところ」と目を丸くした。
試合後、武市の顔は晴れやかだった。「父にいいところを見せられたと思う。これから夏だけを見て頑張りたい」。今度は父に、夏の聖地の素晴らしさを伝える。