履正社4番中山、恩返ししたかった…
「選抜高校野球・決勝、龍谷大平安6‐2履正社」(2日、甲子園)
打ちたかった。仲間のためにも、そして父と兄のためにも。「何も仕事できなかったので悔しいです」。決勝戦は3打数無安打、大会通算打率・176。4番の役割を果たせなかった履正社(大阪)の中山翔太外野手には、歯がゆさばかりが残った。
準決勝では5‐2の八回1死三塁で代打を送られた。この日は1‐3の三回無死一、三塁で、ベンチはセーフティースクイズのサイン。一塁ランナーだけを進める中途半端な結果になった。本来の打棒を生かせず「信頼されるバッターになりたい」と唇をかんだ。
自分の力だけで手にした4番の座ではない。父・義浩さん(53)、兄・和紀さん(23)は、ともに関大北陽で夏の大阪大会決勝まで進んだ元球児だ。
兄にはよくスイングをチェックしてもらった。父とは学校の練習後に週3回ほど近所のバッティングセンターに通い、約400スイングをこなす。努力が実って昨秋には4番を任せられた。大会が始まる2週間前、父にメールで「ありがとう」と伝えた。
父は甲子園でプレーする息子を見て「幸せですね」と話したが、中山は「(甲子園に)来るだけが目標じゃなかった。夏には優勝する姿を見せてあげたい」。家族の夢を乗せた甲子園。夏には悔しさを晴らすとともに、最高の恩返しをする。