市和歌山サヨナラ劇勝で10年ぶり聖地
「高校野球・和歌山大会決勝、市和歌山3‐2智弁和歌山」(26日、紀三井寺)
熱戦に終止符を告げる打球が左中間を破った。2‐2の延長十二回1死一、二塁、3番・瀬戸口が直球を逆らわずにはじき返した瞬間、市和歌山ナインは喜びを爆発させた。
初回から5打席凡退していた瀬戸口を奮起させたのは“魔法の言葉”だった。ネクストバッターズサークルに向かう直前、半田真一監督(34)から「いけるか?」と聞かれた。過去の試合でも、調子が悪いと代打を示唆されることがあったが、不思議とそのような場面では残してきた。この日も「いけます!!」と即答し、サヨナラ打を放った。
もともとは智弁和歌山を志望していたがかなわず「倒したろうと思っていた」と、してやったりの表情だ。自宅のある大阪府岸和田市から、片道1時間半かけて通学する。府内の高校に進学しなかったのは「和歌山の方が(甲子園出場の)確率が高い」から。越境通学を選んでまで追い求めた夢を自らのバットで実現させた。
今春、同校OBで元阪神の藤田平氏が練習場を2度訪れ、部員らにアドバイスを送った。大先輩の金言を生かし、市和歌山商からの校名変更後、初めての甲子園。2度のビハインドをはねのけたこの日のような粘り強さを、10年ぶりの聖地でも発揮する。