九国大付アドゥワ褐色右腕の夏終わる
「全国高校野球・1回戦、東海大四6-1九州国際大付」(14日、甲子園)
褐色の球児の夏は1球も投げぬまま終わった。「チームのために精いっぱいやれたので悔いはない」。大会最長身196センチ右腕、九州国際大付(福岡)のアドゥワ大投手(3年)は号泣し声を絞り出した。
ナイジェリア人の父・アントニーさん(46)と日本人の母・純子さん(45)を持つハーフで日本生まれの日本育ち。幼少期、「なぜ僕の肌の色は違うの?」と母に漏らした少年は小3で始めた野球とともに成長した。
来日25年、異国で苦労した父は長男に厳しかった。サッカーならまだしもナイジェリアに野球文化はない。それでも中学時代には息子に技術、メンタルを徹底的に指導した。
母の旧姓は酒本でVリーグの強豪ダイエーで活躍したバレーボール選手。その体育会系の母が「かわいそう」と思う程だった。アドゥワは「反抗期だったし、野球を辞めようと」と反発した。
「自分のことしか考えなかった」と言うアドゥアは両親の元を離れ高校入学。変えたのは若生正広監督だった。「チームのために」といつも諭された。「ダルビッシュも高校で成長した。体形も似ている」。東北高時代の教え子と自身を重ね、指導してくれたのも自信になった。
「両親、監督がいるから自分がある」と感謝しかない。「神宮で投げるのが目標」と恩返しを大学の舞台で果たす。