超スロ~~カ~ブ!東海大四西嶋12K
「全国高校野球・1回戦、東海大四6-1九州国際大付」(14日、甲子園)
小さなエースが超スローカーブで強力打線を牛耳った。東海大四(南北海道)の西嶋亮太投手(3年)が5安打12奪三振で1失点完投。優勝候補の一角である九州国際大付(福岡)を6‐1で下し、前回出場の1993年以来、夏の甲子園21年ぶりの白星を挙げた。。味方打線も14安打6得点で好投を後押しした。
球速は計測不能。空中を漂う超スローカーブに聖地がどよめいた。東海大四が4‐0とリードして迎えた四回。西嶋が投じたプロ注目の3番・古沢への初球は、テレビ中継の画面から一瞬消えるほどの大きな弧を描いて捕手のミットに収まった。
古沢は見送ってボールとなったが、「早く投げたかった。いい打者なので、自分のペースに持っていこうとした。歓声を力に変えて攻めていった」と、してやったりの表情。六回にも古沢へ2球連続で披露し、八回にプロ注目の4番・清水への4球目に投じた際には、4万7000人の大観衆で埋まったスタンドから、待ってましたと言わんばかりの拍手まで起こった。
超遅球だけではない。直球とスライダーを軸に“超”がつかないスローカーブも交え、終わってみれば、5安打12奪三振で1失点完投だ。「すごい相手だったので、丁寧に投げたのがよかった。100点。自分のためにつくられたと思って、甲子園の舞台を楽しんだ」という会心の投球。168センチ、59キロの小兵が、180センチ、80キロ超の選手がそろう強力打線を牛耳る痛快劇で、東海大四を21年ぶりの初戦突破に導いた。
超遅球は自己流で昨秋に投げ始めた。「直球とスライダーのワンパターンの攻めになっていて、きっかけをつくろうと思った。投げて打者が迷うのを見て使えると思った」という。普段の試合で投げるのは1~3球。球速は58キロと計測されたことがある。この試合で投じた4球はいずれもボールとなったが「(過去に)打たれたことはない」と胸を張る。
昨夏の南北海道大会準々決勝で延長十回サヨナラ負けした苦い経験が西嶋を成長させた。「あれが悔しくて、最後の1球にこだわるようになった。最低でも低めのボール球を投げるよう意識した」と冬場の練習に取り組み、今年の大会では、追い込んで打たれることはほとんどなくなった。
今大会は東海大系列が4校出場。この日の第1試合で敗れた東海大甲府に代わって系列校初白星も手にした。小さなエースは「流れを変えたいときはどんどん投げたい」と笑みを浮かべた。超遅球とともに全国制覇を目指す。