エース平沼“恩人”に捧げる5戦完投V

 「選抜高校野球・決勝、敦賀気比3-1東海大四」(1日、甲子園)

 決勝戦が行われ、敦賀気比(福井)が東海大四(北海道)を逆転で下し、初優勝を果たした。北陸に優勝旗が渡るのは春夏通じて初めて。

 歓喜の輪の中で敦賀気比・平沼翔太投手(3年)は号泣していた。初戦から5試合すべて完投。気迫の計603球で頂点にたどり着いた。「無我夢中でした。小さいころからの夢がかなってうれしい」。鉄腕エースは真っ赤な目で喜びを口にした。

 天国の“恩人”も喜んでくれるはずだ。

 09年の小学6年生の時、平沼は硬式少年野球チーム「オールスター福井」に体験入部するため、練習場を訪れた。そこで総監督を務めていたのが元阪神のエース・小林繁さんだった。小林さんは地元で「天才」と呼ばれていた平沼を呼び寄せ、「お前より才能があるやつはいっぱいいる。絶対に天狗になるな」と語りかけたという。

 それから間もない10年1月、小林さんは心不全で亡くなった。57歳だった。

 平沼は小林さんからの言葉を胸に練習に明け暮れた。敦賀気比でも1年春からマウンドに上がったが、おごることなく上を目指した。仲間がミスして沈んでいれば、陽気に歌を歌って盛り上げた。

 夢をかけた決勝戦。連投の疲れで「体は重かった」が、気力で腕を振った。ピンチの連続にも耐え抜き、8安打1失点に抑えた。

 春の王者になっても“天狗”にはならない。まだ夏がある。「追われる立場になった。死にものぐるいで向かっていきたい」。少しだけ喜びに浸ったあと、再び厳しい鍛錬に向かう。

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