虎ホレた!仙台育英・平沢は鳥谷2世や
「全国高校野球・1回戦、仙台育英12-1明豊」(9日、甲子園)
豪快な一発で、鮮烈なインパクトを残した。今秋ドラフト候補の仙台育英(宮城)の平沢大河内野手(3年)が1回戦・明豊(大分)戦に「3番・遊撃」で出場し、初回にバックスクリーン右へ先制2ランを放った。チームを大勝に導く5打数2安打2打点の活躍に、阪神を含めてネット裏のスカウト陣も高評価。聖地に新たなスター候補が現れた。
力感あふれるスイングから放たれた打球は浜風を切り裂き、バックスクリーン右の最深部へ突き刺さった。一回1死二塁。平沢が豪快な先制2ランで、夏の主役に名乗りを上げた。
「打った瞬間、行くと思いました。こんなに感触が良かったのは、自分でも初めてです」。大きな瞳を輝かせながら、会心の一撃を満足げに振り返った。左腕をも苦にしない。低めの直球を見逃さず「(投手の)右、左問わず、センター方向を意識していた。それが実践できたのが良かった」と平沢。節目の高校通算20本塁打を聖地でたたき出した。
2試合で計9打数2安打にとどまった今春センバツに比べ、打球の力強さが増した。負傷を乗り越え、逞(たくま)しくなった。
今春東北大会で死球を受け、右足小指を骨折。バットを振れるようになったのは、7月の宮城大会開幕の1週間前だった。その間、室内にある高さ7メートルのロープを上るトレーニングを欠かさず敢行。おのずと腕力が鍛えられた。さらに昨夏に体重が落ちた反省から、甲子園入り後も宿舎での食事に加え、毎日、間食に松屋で牛丼をほお張る。体重は73キロから76キロにアップした。
長打力に圧倒的な磨きをかけた平沢。堅実な遊撃守備を含めて、ネット裏でその評価は急上昇だ。左打ちの内野手が補強ポイントの阪神は上位候補としてリストアップしており、葛西スカウトは「まだ本調子じゃないけど、バッティングに力強さが出てきた。野手ではトップレベル。(故障で)ランニングがなかなかできなかった中で、これだけの結果が出せるのがすごい」と絶賛。オリックス・中川チーフスカウトは「将来、鳥谷のような選手になれる素材」とうなった。
名前は、大きな河と書いて「大河」。「大きな人間になれということだと思う」。虎もほれる“鳥谷2世”。平沢の織りなす夏の夢舞台は、まだまだ終わらない。