夏の甲子園初戦で4校全滅…四国の不振

 高校野球の夏の甲子園で、27年ぶりに四国勢4校がすべて初戦敗退を喫した。

 大会第2日(7日)に鳴門(徳島)が2-8で九州国際大付(福岡)に完敗すると、第3日には今治西(愛媛)が怪物1年生・清宮を擁する早実(西東京)に0-6で完封負け。直後の試合で明徳義塾(高知)が今春センバツ王者の敦賀気比(福井)に3-4でサヨナラ負けを喫し、1984年の初出場から続いていた初戦の連勝記録が「16」でストップした。そして第5日には、藤井学園寒川(香川)が4-10で高崎健康福祉大高崎(群馬)に敗れた。

 いずれも対戦相手が強豪校。組み合わせに恵まれなかった面はあるものの、こういう結果も起こり得るだろうという予感は大会前からあった。

 かつて「野球王国」と呼ばれた四国勢は近年、甲子園で深刻な不振に陥っている。過去20年の夏の甲子園での成績を前半の10年間(96~05年)と後半10年間(06~15年)に分けて比較すると、その差が鮮明に浮かび上がってくる。

   96~05年 06~15年

香川 5勝10敗→2勝10敗

徳島 15勝10敗→5勝10敗

愛媛 21勝9敗→7勝10敗

高知 18勝9敗→10勝10敗

 計 59勝38敗→24勝40敗

勝率 ・608→・375

 4県すべてが大幅に成績を落としており、合計勝利数は59勝から24勝に激減。特に目立つのが愛媛県勢の低迷ぶりだ。96年に松山商が全国制覇を果たし、01年にも4強入り。翌02年には川之江が準決勝に進み、04年には済美が準優勝した。それが最近10年間では07年に今治西が8強入りしたのが最高で、勝ち星は21勝から7勝に減った。

 明徳義塾が全国制覇した02年には4県の代表校(ほかに尽誠学園、鳴門工、川之江)すべてが8強入りするという強さを見せた。しかし、それ以降は急激な下降線をたどっている。

 なぜ勝てなくなったのか。理由は1つや2つではないだろうが、多くの関係者が指摘するのが「選手の県外流出」という問題だ。ある強豪校の指導者は「最近は、練習環境や寮などの施設が充実している県外の私立校を選ぶ選手が増えている」と話す。

 四国(特に香川、徳島、愛媛)は今でも公立校が優位を保っている数少ない地域だが、グラウンドやトレーニング設備、寮などの環境面ではどうしても県外の強豪私学には及ばない。甲子園や将来のプロ入りを夢見る選手たちが野球に打ち込むために、より良い環境を選ぶのは仕方のないことだろう。

 また「県内での戦力分散」を原因に挙げる声も多い。かつては、いわゆる四国四商(高松商、徳島商、松山商、高知商)に有望選手が集中し、各県で甲子園出場を半ば独占していた。しかしそういった時代は過ぎ、県内にいくつかのライバル校が台頭するにつれて有力選手が分散。その結果、全国で通用する強豪チームが生まれにくくなっているという指摘だ。また、全国平均に比べ早いペースで進む子供人口の減少も無関係ではないだろう。

 松山商の「延長18回引き分け再試合」や「奇跡のバックホーム」、蔦文也監督(故人)が率いる池田の「やまびこ打線」に、明徳義塾の「松井の5敬遠」…。四国勢は甲子園で数々の伝説的な戦いを繰り広げ、高校野球100年の歴史を彩ってきた。「四国が強くなければ面白くない」という高校野球ファンもまだ多いのではないだろうか。強い四国の復活を期待している。

(デイリースポーツ・浜村博文)

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