豪打だけじゃない「柔の清宮」で16強
「全国高校野球・2回戦、早実7-6広島新庄」(13日、甲子園)
早実(西東京)のスーパー1年生・清宮幸太郎内野手が、技で5年ぶりの16強入りに貢献した。広島新庄(広島)との2回戦では変化球を捉えた先制右前適時打を含む2安打1打点。守備でも六回に小フライをハーフバウンドで処理して併殺にする好プレーで、4万4000人の大観衆を沸かせた。渡辺大地外野手(3年)の決勝適時打でシーソーゲームを制した早実は、第10日第1試合で東海大甲府(山梨)と8強入りをかけて激突する。
激闘を制した喜びが、元気いっぱいにあふれた。最後を締めた同じ1年生の右腕・服部に、清宮が抱きついた。合計28安打の乱打戦を制しての16強。西東京大会からの持ち味そのままの白星に「いつもヒヤヒヤなので。甲子園で自分たちの野球ができたかな」と、手応えをにじませた。
大砲のイメージとは違う顔で、チームを引っ張った。三回1死一、三塁から、外角低めのスライダーを巧みなバットコントロールで拾う先制右前適時打。一塁ベース上で見せた“どや顔”が、胸の内を表していた。
「あのヒットも自分らしいと言えば、自分らしい。悪くない」。自分らしいのは『技』が詰まっていたからだ。「力だけじゃない。技術もあってこそのバッティングだと思うので」。16歳は自負をのぞかせた。
対応力の高さは際立つ。第1打席で連投されて空振り三振した球種を、次の打席であっさり捉えた。まず心がけるのは「スイングを自分の形にしっかり戻すということ。それが近道かなと思う」。確たる信念を元に原因を探る。この日の答えは「いい投手なので、気持ちが入り過ぎていた。“楽しんでいる感”がなかったので、満喫してやろうと思いました」。そんなメソッドが勝負強さの秘密だ。
六回の守備では無死一塁から、小フライとなった送りバントをハーフバウンドで処理。とっさの判断で併殺に結びつけた。実は、試合前の取材では「小フライとかもバウンドさせず、一つずつアウトを取っていきたい」と、真逆のことを言っていたが「何か急にやりたくなっちゃった」と、悪びれずに笑った。ここでも対応力の高さが生かされた。
3出塁はすべて得点を生んだ。和泉実監督(53)は「チームの一員として、いい潤滑油になっている」と目を細めた。重圧を感じない理由を問われた清宮は「甲子園が楽しいからじゃないですか。自分が打つと球場も盛り上がる。不思議な力をもらえる」とうなずいた。プレーを楽しみ、マンモスの大観衆を楽しませる。この怪物ルーキーは、聖地に愛される資格がある。