山下氏・高知・島田監督対談(5)

 デイリースポーツ評論家の山下智茂氏(70)=星稜総監督=が次世代の高校野球を考える企画の第3弾は、かつての野球王国、四国へ飛んだ。春夏2度優勝の名門復活を目指す高知・島田達二監督(43)を直撃。2大会連続でU-18日本代表コーチを務めるなど経験を積む一方で、夏の決勝では5年連続で明徳義塾に敗れる苦渋を味わっている。山下氏が次世代を担うと期待する指導者に迫った。

  ◇  ◇

 (話は変わって)

 山下「世界選手権を2大会見て、すごく勉強になったんじゃない?おそらく高野連の先生方も、四国を懸念する意図があって島田さんを人選していると思う。四国のリーダーとして引っ張りながら、脱皮して器を大きくし、若手を引っ張る存在になってほしいと思っているんでしょう」

 島田「ありがたいと思います。自分はそんな実績もない。今後の役割においてはすごく重いと感じています。この経験を生かしていかないとダメだし、同年代の人から下の人にいろんな経験を伝えていきたい。年上の方に負けないように、こんな経験はなかなかできない。これが自分の役割ではないかと感じています」

 -四国の野球文化は根付いている。

 島田「色を持った指導者がおられる。個が強い監督の色が強い。出しやすい、これからは子供たちも変わってくると思う。それでも、監督の仕事はすごく大事。環境を整え、パワーを与える」

 -島田監督のカラーは?山下総監督は「熱血漢」だと評するが。

 島田「逆に、そういう面は持った方がいいですか?」

 山下「そうだね。島田さんはいろんな特徴を持っているよね。監督としておもしろいキャラクター。情熱もあるし、指導歴もあるし、知将でもあるし、持ちすぎて特徴がないのかも」

 島田「自信がないんですよね。練習メニューも常に考えるが、いろいろやらせたい。せっかく高知高校に入ってくれたので、野球も勉強も頑張れというのもある。言うだけじゃなく、こっちが何ができるのかとか日々考えています。方法は変わってきているけど。野球ノートなんかも今の子供には必要なのかな。2年前からやって、どうやったらノートを生かせるのか考えてます」

 -字で書く方がいい。

 島田「グラウンドで顔を合わせるのにノートもどうかなとも思うんですが。遠距離恋愛ちゃうねんし(苦笑)。でも、部員が多いので全員の意見が聞けない。80人いるので今は5日に1回くらい回ってくるノートが14冊。人の書いたのに感想を書く。こいつこんなこと考えているとわからせる。気になるところは線とか引いたりして。一方的に言うのか、こいつらの口で言わせて乗ってやるのか。要はうまくなって、ちゃんとした人間になっていく方法を考えています」

 -保護者との距離感は?

 島田「基本的には保護者会会長と連携を取ります。お茶出しなんかはおいてくれたらやるのでと。子供らにはできればいろんなことをやらせたい。のどが渇いたら自分らでやる。変な言い方だけど、見守っておいてほしい。信頼してやらせても子供をつぶすわけじゃない。今の親は子供が怒られたら一緒になって悲しむし、逆に怒ってきたりとか。でも、僕らの方が長い時間を接している。お宅の家庭に合わせられないが、信じてもらわないとやりようがない。休みの連絡も具合が悪くても今は全部親が出てくるので、誰が野球してるのと聞く。お前やろって。でも、しゃべれない。そういう子が最初は多いが、だんだんしゃべれるようになってきます」

 山下「高校野球の監督、先生、こんな最高の職業はないよね。育てる楽しみがある」

 島田「一緒にやることも楽しいし、卒業生が社会で頑張ってやっているのを見るとうれしく思う。こういう仕事をさせてもらわないと感じることができないので」

 -四国には島田監督と同世代の監督が多い。新しい時代を担う世代だ。

 島田「40代。徳島は川島の北谷監督とか城南の島監督が頑張っている。そういう年代が頑張らないとダメ。今は昔かたぎの職人的な監督は減っている。でも、昔の名物監督みたいな気概でやっていかないといけない。子供の時は甲子園を目指して必死にやっていた。大人もそういう価値観を持ってやらないとダメじゃないか」

 -まずは明徳義塾。馬淵監督の壁がある。

 島田「いや~、あの~(苦笑)。全国の中でもあの方の采配は抜けていると思う。だからこっちも成長させてもらえる。だから同じことをしていてもダメ。まねをしていても抜けない。高知高校のやり方をしていく中で勝ちたい」

 -馬淵監督とは交流も深い。

 島田「高知は学校数が少ないので皆、親しいですね。2月に野球部対抗の駅伝大会があり、1校から2チーム出していいです。野球なんで9人でつなぎ、うちは毎年ぶっちぎり。去年は1、2位でした。いつも馬淵さんには『何やってるの?勝負は野球やろ?』って言われる。それで(とぼけて)『忘れてました』って言うんです。でも、馬淵さんも見たことないぞって選手を出してくるんですよ。明らかに駅伝要員やろって(笑)」

 -馬渕監督らしい。

 島田「勝負事なんでね。これも1つの自信になる。自分たちの冬場の練習の自信になる。1つ何か自信をつかむと伸びてくるもの。野球でも勉強でも何でもいいと思う。成功体験があれば、他の分野でも頑張る。優勝したら公式戦で使ったボールをもらえるので、ボールとってこいとガンガン走ってます」

 -県全体で盛り上げることも大事。

 島田「他県では練習試合を(県内で)組まないとこがあるが、高知県は普通にやる。うちと明徳、高知商も。普通にお酒も飲みますしね」

 -馬淵監督もそこはあまり気にしない。

 島田「心臓に毛が生えているんですよ(笑)」(終わり)

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