小豆島・樋本主将「エンジョイ」表現
「選抜高校野球・1回戦、釜石2-1小豆島」(21日、甲子園球場)
あっという間で、でも濃密な時間だった。敗れはしたが、大観衆の前で誓った「全身全霊のプレー」は最後まで貫けた。「アルプスとグラウンドが一体になって野球を楽しめました」。お立ち台の上で小豆島(香川)の主将・樋本尚也内野手(3年)は笑った。
無口で恥ずかしがり屋な少年は、小豆島野球部に入って変わった。自主性を重んじ、練習メニューや作戦も自分たちで考える「ボトムアップ」のチーム作り。口数は少なくても、重みのある樋本の言葉は仲間を一つにまとめる力があった。
11日の組み合わせ抽選会。強運の主将は選手宣誓の大役を引き当てた。ただ、人前で話すのはやっぱり苦手。「やってしまった…」と顔をしかめたが、今度は仲間たちが支えてくれた。部員全員で言葉を選び、完成した宣誓文。樋本は「支えてくださる方々を笑顔に」というフレーズにこだわった。開会式で、17人の熱い思いを聖地の空に響かせた。
八回1死で回ってきた第4打席で、樋本は痛烈な左前打を放ち、二盗も決めた。得点にはつながらなかったが、果敢なプレーで支えてくれた人々を笑顔にした。
「甲子園はすごく楽しい場所でした。夏は1勝して、校歌を歌いたい」。言葉とプレーで目いっぱい表現した「エンジョイ・ベースボール」。主将の顔に晴れやかな笑みが広がった。