大阪桐蔭西谷監督37勝!蔦さんに並ぶ
「選抜高校野球・1回戦、大阪桐蔭9-0土佐」(23日、甲子園球場)
1回戦3試合が行われ、優勝候補の大阪桐蔭(大阪)が土佐(高知)を“奇策”で押し切った。西谷浩一監督(46)は中盤に連続でヒットエンドランを仕掛けて相手守備をかく乱し、ワンサイドゲームに持ち込んだ。05年夏の甲子園初采配以降、12大会連続で聖地の初戦を突破し、甲子園での通算勝利数は37勝。歴代7位の池田・蔦文也元監督、大垣日大・阪口慶三監督らに並んだ。
指揮官が振った意外なタクトがゲームの流れを変えた。高校野球のセオリーを覆すような無死二塁からのバスターエンドラン。“奇策”で生み出した貴重な4点目が、土佐の戦意をへし折った。それでも西谷監督は「邪道です。恥ずかしい策。甲子園でやるもんじゃない」と苦笑いを浮かべる。
場面は3点リードの六回無死二塁だった。「次の1点でどう転ぶか分からない展開。動いて(相手守備を)クシャクシャにしよう」と、栗林に2ボールからバスターエンドランを命じた。打球は遊撃の頭上を越え、二塁走者が一気に生還。「動きを見てたら遊撃と一塁が結構、動いてたので」と確信に近い一手で追加点を奪い、伝統校の粘りを崩した。
相手の守備を混乱させ、最終的には12安打9得点の圧勝。序盤は相手バッテリーに苦しめられ「大人げないですが…」と、ベンチから大声を張り上げ捕手にプレッシャーをかけ続けた。選手には前日までに5失策をした後の守備を想定して練習を積ませるなど「最悪をイメージさせて」初戦に臨んだ。
自身も練習後には自宅でホワイトボードと磁石を使い、相手守備陣形と攻撃の戦略を練る西谷監督。昨夏は大阪大会準々決勝で涙をのんだ。史上初の大阪4連覇を阻止された。号泣する選手たちの中で当時2年生でレギュラーだった吉沢一翔主将(3年)は、ベンチ外の3年生に「勝てなくて申し訳ありませんでした」と絶叫し、膝をついて謝罪した。
あまりにも壮絶だった王者の落日-。枯れるまで悔し涙を流してスタートしたチームだからこそ、指揮官は「何とかこの子たちに優勝の喜びを教えてあげたい」と言う。蔦さんらに並ぶ歴代7位タイ通算37勝、そして12大会連続の初戦突破。全国制覇を知らない世代がガムシャラにもぎ取った1勝から、復権は始まる。