世界芸術文化振興協会「東京大薪能」を開催!半田会長も舞う
NPO法人「世界芸術文化振興協会」が主催する「第十七回 東京大薪能」(後援・文化庁、東京都)が、23日に東京都庁の都民広場で開催された。ユネスコの無形文化遺産で日本が世界に誇れる伝統芸術である「能楽」を、多くの人に親しんでもらい、次世代に継承されることを目的に、1998年より毎年同所で無料の一般公開として開催されてきた。都庁の改修工事もあり、17回目となる今年は4年ぶりの開催。4177人もの観客が、夜空の下、伝統芸術の見事な舞台を堪能した。
グリーンとブルーにライトアップされた東京都庁のたもと。暗闇の中に薪(たきぎ)のともしびで浮かび上がる能舞台。600年の歴史を持つ伝統芸術にふさわしい、幻想的かつ荘厳な雰囲気の中、立ち見席までギッシリと満員となった4177人の観客も、繰り出されたその見事な舞台に、すっかり魅了されていた。
日本の首都・東京。その象徴とも言える都庁の広場で行われた「東京大薪能」。近代的なロケーションの中で、日本古来の伝統芸術で日本文化の王道でもある「能」が、見事に融合するこのイベントは、主催する世界芸術文化振興協会の会長で、能楽師でもある半田晴久氏(67)が音頭を取り、1998年にスタートした。
開始した経緯に半田氏は「能楽はユネスコの無形文化遺産で日本が世界に誇る伝統芸術ですが、現代は趣味や娯楽が多様化し、能楽に親しむ日本人が年々少なくなっている。それでも、何かをキッカケに興味を持ち面白さを知れば、進んで鑑賞するようになります。その中から習う人も現れるのです。そこで能楽愛好者が、次世代に継承されることを願って始めた」と語った。年々、「能」に対する世間的な興味や注目が薄くなっていくことを憂慮。自ら楽しむ人の裾野を広げて「日本文化の王道」である「能」を、次世代へと継承していくことを目指したのだった。
そのため第1回開催から毎年1回のペースで開催してきたが、開催当初の趣旨から、東日本大震災が発生した2011年は中止し、それ以外は、毎年無料開催している。15年以降、都庁が改修工事に入ったため、会場が借りられず中断。17回目となる今年は、4年ぶりの開催となったが、多くの人に伝統芸術への入り口となる場を提供し続けてきた。
その広がりは日本人だけでなく、爆発的に増えている外国人観光客にも目を向けている。パンフレットには英文表記が加わり、公演中は同時通訳も行われた。ポスターも日本語のみならず英語、中国語版も、今後は用意する予定。また公演の模様はYouTubeで全世界へ配信されるなど、日本文化に興味を持つ外国人への門戸を広げている。
そんな中で始まった今年の公演。まず半田氏による1時間の「入門能楽鑑賞講座」が行われ、「能」を見るポイントや知識など、わかりやすく解説された。その後は、一般にもなじみある演目が上演された。
最初の演目「羽衣」は、日本各地に語り継がれる「羽衣伝説」の物語。釣りのため浜にやってきた漁民・白龍(ワキ)が、松の木の枝に掛かっている美しい衣を見つける。珍しいので家宝にしようと持ち帰りかけるとき、一人の女性(シテ)に呼び止められ「その衣は自分のもの。天人の羽衣だから返してほしい」と言われる。それに対し白龍は、羽衣を返す代わりに、天人の舞をみせてほしいと言う。喜んで承知した天人は、羽衣を着け月世界の天人生活の面白さを表現する舞を披露して、天空のかなたに消えていく、というストーリーだ。
続く狂言「附子(ぶす)」は、好物の黒砂糖を、家来たちに盗み食いさせないために、主人は猛毒の附子と偽り出掛ける。だが、留守を預かった好奇心旺盛な家来、太郎冠者と次郎冠者がこれを平らげ、言い訳する物語。最後の「土蜘」は、蜘蛛の糸(千筋の糸)を投げつける演出でおなじみの物語だ。
そして、一日の番組の最後となる祝言仕舞「草薙」では、半田氏が一曲の一部分を舞う仕舞の形式で締めくくった。観客も大きな拍手で感動を表現。中にはスタンディングオベーションで賛辞を贈る人もいた。4年ぶりの開催は大成功となった。
終演後、半田氏は「来年も再来年も東京で、無料公開でやる」と開催継続を宣言。また来年がラグビーW杯、再来年は東京五輪・パラリンピックと、世界的祭典の国際大会がめじろ押しとあって、外国人に向けたホスピタリティーをより充実させる意向だ。
「来年はラグビーのW杯。18、19回をやる。東京五輪の2020年に20回目となる。五輪の年は3日連続での開催も考えたい。同時通訳や外国語のパンフレットがあるのは、ここだけ。世界に冠たる日本の舞台芸術。この文化を広めるのもNPO法人の役割」。
今後も日本のみならず世界へ。文化継承と広がりという大事な機会を作り上げるつもりだ。